陸に出た最初の魚、足のような強いヒレ

2014.01.17
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ティクタアリク・ロゼアエの骨盤の化石からは、尻ビレを支柱やパドル代わりに使っていたことをうかがわせる特徴が見てとれる。

ILLUSTRATION BY KALLIOPI MONOYIOS
 約3億7500万年前に陸に上がり歩き始めた最初の“魚類”は、強靭な尻とヒレによってその偉業を成し遂げたとする研究結果が発表された。 ティクタアリク・ロゼアエ(Tiktaalik roseae)は初めて陸生を始めた古代魚類の1種であり、2006年にカナダの北極地方でナショナル ジオグラフィック協会によって発見された。今回の研究報告は、人類の祖先である四肢動物が水から出て陸に上がった過程を詳しく解き明かすものだ。

「ティクタアリクは大きく、その臀部は非常に頑丈だったと思われる」とシカゴ大学の古生物学者で、今回の研究を率いたニール・シュービン(Neil Shubin)氏は話す。

 研究結果は、ティクタアリクのような脊椎動物が水生から陸生へと移行する過程で骨盤帯が変化したことを示唆している。「骨盤帯の変化は水中、正確に言えば浅瀬で始まったようだ」とシュービン氏は説明する。

◆ティクタアリクの尾

 ティクタアリクの化石は、極寒の地であるカナダのエルズミア島で発掘された。ティクタアリクとは、現地のヌナブト準州に暮らすイヌイットの人々の言葉で“大きな淡水魚”を意味する。

「見つかったティクタアリクの化石はあまりに大きく、型を取るための石こうが足りなかったため、2つに分割せざるをえなかった」とシュービン氏は話す。「そのうち尾に近い方を調べているとき、中の骨盤の形状を見て驚いた」。

 魚類の尻ビレを支える骨盤に比べてはるかに大きかっただけでなく、ティクタアリクの臀部は外側に向けて広がっており、陸生動物のものに近い形状だった。ティクタアリクは大きくて自在に動く尻ビレを使って、自ら干潟や浅瀬へと上がったのではないかと考えられる。

 スウェーデンにあるウプサラ大学の古生物学者ペール・アールベリ(Per Ahlberg)氏によれば、古代の魚類と後に現れるはるかに大きな陸生動物とをつなぐ解剖学的な進化の過程については、これまでほとんど分かっていなかったということだ。

「今回発掘されたティクタアリクの化石は極めて保存状態がよく、これを使って、腹ビレの筋肉組織やさまざまなヒレの動きを再現できるだろう」とアールベリ氏は電子メールで述べている。

「そうなれば、魚類から四肢動物への進化に伴う運動器官の変化の解明に大いに役立つはずだ」。

◆陸生動物

 3億9500万年前、なぜ魚類は陸へ上がったのか。その理由はいまだ謎に包まれていると、オーストラリアのビクトリア州にあるモナシュ大学の古生物学者キャサリン・ボワベール(Catherine Boisvert)氏は話す。当時、古代の超大陸ゴンドワナは古代北アメリカ大陸に向かって移動を続けていた。

「この移動に伴い、多くの浅瀬が形成され、それらがワニのような動物にとって絶好の生息地となった。当時、これらの浅瀬は赤道付近にあったため、熱帯性の快適な環境だったはずだ」とボワベール氏は話す。

 一方、地上には、ティクタアリクの餌となるものは、クモ、サソリ、昆虫、それにわずかな植物ぐらいしかなかった。一部の研究者は、捕食動物が少なかったこと、あるいは安全に産卵できる場所があったことが、陸生動物への進化を推し進める要因となったと主張する。

「陸への移動は段階的に行われたと考えている。生物は、ある日突然、海から陸へ上がったわけではない」とシュービン氏は話す。

「水中から浅瀬、湿地、そして岸辺へと移動し、ゆっくりと時間をかけて陸に上がっていったのだ」。

 今回の研究は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌オンライン版に1月13日付で公開された。

ILLUSTRATION BY KALLIOPI MONOYIOS

文=Dan Vergano

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