肉食獣の祖先は小型の樹上性哺乳類

2014.01.10
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ドルマーロキオン・ラトウリの想像図。これまで知られている中で最も原始的な食肉類だ。

Art courtesy Charlene Letenneur (MNHN) and Pascale Golinvaux (RBINS)
 5500万年前の小型の樹上性動物の化石が発見された。骨を調べたところ、この動物は、現生の恐ろしい肉食性哺乳類のルーツかそれに近い存在であることが明らかになった。 ベルギー王立自然史博物館の古生物学者フロレアル・ソレ(Floreal Sole)氏らの研究チームはこのほど、ドルマーロキオン・ラトウリ(Dormaalocyon latouri)の歯、顎、足首の骨の標本250点あまりを新たに発見したと発表した。この学名は、化石が見つかった発掘現場のあるベルギーのドルマールという地名にちなむ。そこは、始新世初期の化石の産地として以前から知られている。

 顎骨と歯の化石は、この動物が肉食であったことを示す重要な証拠だ。ソレ氏によると、ドルマーロキオンは、これまで知られている中で最も原始的な食肉類の仲間だという。食肉類には、現生の280種あまりの肉食性哺乳類、すなわち食肉目(ネコ目)が属する。ライオン、アザラシ、クマ、ネコ、イヌなどがこれに属し、ドルマーロキオンはそれらすべての祖先にあたる。

 肉食性哺乳類には、ほかにも3つの科(オキシアエナ科、ヒアエノドン科、ウィウェラウス科)が古第三紀に存在したが、いずれも絶滅したとソレ氏は述べる。年代的にはドルマーロキオンは最古の食肉類ではない。その100万年前にウインタキオン(Uintacyon)という樹上性動物がおり、食肉類の起源としてはこちらのほうが遠いと考えられている。

◆リスとクーガーの中間

 ドルマーロキオンは、どことなくリスと小型のクーガーを合わせたような姿をしていたと考えられ、口腔の特徴が肉食への重要な適応を示している。体重0.5~1キロのこの哺乳類は、昆虫その他の自分より小さい動物を食べていたとみられる。

 ドルマーロキオンは、暁新世と始新世の境界の時代に生息したが、この時代の化石は非常に見つかりにくいと、デューク大学キツネザル・センター化石霊長類部門の責任者を務めるグレッグ・ガンネル(Gregg Gunnell)氏は述べる。ガンネル氏は今回の研究には参加していない。

「短い期間、おそらくは5580万前から5600万年前までのものが、適切な岩石の中に保存されていなければならない。つまりこの動物は、暁新世と始新世の境の限られた時期について教えてくれる存在であり、その時期はおそらくわずか20万年ほどだ」とガンネル氏は述べる。そしてドルマールは、ヨーロッパでこの時期の化石が見つかる非常に数少ない場所の1つだという。

◆暑く、森に覆われた地球

 またこのころは、暁新世-始新世境界温暖化極大(PETM)という出来事があり、生物の進化と極端な地球温暖化がみられた時期だ。さらに海水位の低下によって、現在のヨーロッパ、北アメリカ、アジア大陸の間が陸地でつながった。この陸橋を通じて、哺乳類、霊長類、齧歯類(げっしるい)などの脊椎動物がこの時期に生息範囲を広げた。PETMは始新世の初めに突如として終わり、海水位が上昇した後、動物たちはそれぞれの大陸に合わせてさらなる進化を遂げた。

「今回の化石は、真の霊長類が初めて出現したのと同じ時期のものだ。そのためドルマーロキオンも、暁新世と始新世の境に拡散した、現生につながる動物たちにつらなると考えられる」とガンネル氏は述べる。

 当時の北半球は深い森に覆われており、おそらくそのことが、足首の骨が示す樹上生活にドルマーロキオンを適応させたと考えられる。

「樹上性であったため、同時期に出現した同じく樹上性の霊長類たちともうまくなじんだと思われる。これらは北半球の大陸に急速に広まった、ごく初期の始新世の動物相に属する」とガンネル氏は述べる。

 始新世の前の暁新世は、約6500万年前の白亜紀と古第三紀の境に起きた大量絶滅に続く時代だ。進化が拡大したこの重要な時代には、哺乳類や鳥類が地球上に広く分布し、すぐ前の時代に絶滅した恐竜や大型爬虫類の占めていた生態的地位(ニッチ)を獲得していった。暁新世は約5500万年前まで続き、その次の始新世は約5500万~3390万年前まで続いた。

「始新世の最初期に多様な食肉類がみられることから、食肉類は暁新世後期に多様化したと考えられる」とソレ氏は述べる。今後、暁新世後期のさらなる生物種を発見することで、有胎盤哺乳類はたった一度で肉食の食性をもつようになったのか、それともさまざまな、現在では絶滅しているグループ内で、複数回にわたってそのような変化が起こったのかを解明したいという。

 今回の研究は、1月7日付で「Journal of Vertebrate Paleontology」誌オンライン版に発表された。

Art courtesy Charlene Letenneur (MNHN) and Pascale Golinvaux (RBINS)

文=Brian Handwerk

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