アメリカ大寒波で温暖化否定論が噴出

2014.01.10
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イリノイ州ミシガンでは1月6日、気温が摂氏マイナス18度を下回り、ミシガン湖の湖面から水蒸気が立ち昇る。

Photograph by Scott Olson, Getty
 過去20年間で最も厳しい寒波は、地球の気候が本当に温暖化しているのかと、人々に疑問を投げかけている。 保守派Webサイト「Breitbart.com」は、この大寒波を地球温暖化“でっち上げ”の証拠と呼んだ。また、実業家のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏はツイッターで、「今我々はここ20年で一番の寒波を経験しているが、ほとんどの人がこのような寒さを記憶していない。これが地球温暖化?」(@realDonaldTrump)とつぶやいた。

 しかし気候科学者たちは、今回の天候により現行の気候モデルが無効になるわけではなく、今週の極渦に対するさまざまな反応は、人々が寒さを忘れてしまったことを示しているという。

 ここ数日、中西部の一部地域では気温が摂氏マイナス40度、体感温度に至ってはマイナス51度にまで低下し、はるか南のアラバマ州やジョージア州でもここ数年で一番の寒さを経験した。また、それによって20人以上の死者が確認されている。

 テキサス州共和党上院議員テッド・クルーズ(Ted Cruz)氏は、「寒いな。アル・ゴア氏は、こんなことは起こらないと私に言ったのに」とからかった。

 ソーシャルメディア上では、凍りついたアル・ゴア氏の写真が人々の間を行き交っている(テレビ番組「The Daily Show」の中で、キャスターのジョン・スチュワート氏もその様子についてからかった)。

◆忘れられた寒さ

 しかしながら、ニューヨーク市にあるNASAゴダード宇宙科学研究所(GISS)の気候科学者ギャビン・シュミット(Gavin Schmidt)氏はナショナル ジオグラフィックの取材に対し、「人々が全体像を見失っている」と話す。

「我々は一般的な基礎知識、すなわち気候の長期的な傾向を見守るべきだ。ここで議論しているのは地球全体の平均値であることを認識する必要がある」と同氏は話す。

 8日の朝にセントラルパークで極寒のランニングを楽しんだというシュミット氏は指摘する。気候データによると、北米では過去30年間、気温が着実に上昇していると。

 また、「20年前には当たり前だったこの寒さを忘れてしまったというのが実情だ」と同氏は述べる。

 シュミット氏はミネアポリスを一例に挙げた。

 1970年代、ミネアポリスでは摂氏マイナス23度を下回った夜が毎年平均14.7日あったが、ここ数年は同様の寒さに見舞われたのはほんの数日だった。2002~2012年の10年間で、マイナス23度を下回った平均日数は3.8日である。

「このように、状況は急速に変化した。温暖になってゆく中、人々はこの寒さに驚きを覚えるのだろう」とシュミット氏は言う。「我々はすっかり寒さを忘れてしまった。つまり、寒さへの準備ができていないのだ」。

◆異常気象のパターン?

 この大寒波は、平年を上回るアラスカやシベリアの気温やオーストラリアの熱波など、近年世界中に影響を及ぼしている異常気象パターンの一例である。多くの科学者は、気候変動と今回のような特定の気象現象の間に線引きをするのは難しいと述べる。

「気候変動がX、Y、Zといった明らかな要因によってどのように影響を及ぼされているか多くの憶測はあるが、特定するのはとても難しい」とシュミット氏は言う(地球温暖化の影響でジェット気流に変化が生じ、寒波が引き起こされたとする報告もあるが、シュミット氏は憶測の範疇と考える)。

 気象学者としては、大寒波の直接的理由を説明したに過ぎない。カナダ北部で冷却された「極渦」と呼ばれる空気が、大気圏上層に吹くジェット気流の蛇行によってアメリカへと吹き流されたという理由だ。

 1月7日には50州すべてで凍結温度に達したが、気象予報士によると、歴史的に見ればそれほど珍しいことではないようだ。

 地球全体の気候温暖化を考えるとき、シュミット氏は短期的な低温の影響に振り回されないことが重要だと話している。

Photograph by Scott Olson, Getty

文=Brian Clark Howard

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