米社が月面採掘計画、土地の所有権は?

2013.11.14
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宇宙開発企業ビゲロー・エアロスペース社が、月の採掘権を与えてほしいと呼び掛けている。

Photograph by Universal History Archive/UIG/Getty Images
 月の地主は誰なのか。11月12日に行われたNASAの説明会で、宇宙事業を展開している民間企業ビゲロー・エアロスペース社の社長ロバート・ビゲロー(Robert Bigelow)氏が、“月の採掘権”を連邦航空局(FAA)に要求した。 近い将来、“宇宙ホテル”の実現を目指す同社は、ネバダ州ノースラスベガスに拠点を置く。今年1月には、国際宇宙ステーション(ISS)の拡張型居住モジュール、「Bigelow Expandable Activity Module(BEAM)」を、2015年から2年間試験運用する契約をNASAと結んでいる。

 NASAは現在、停滞する有人宇宙探査の範囲をISSの軌道外へと拡大するプロジェクトを推進。69歳のビゲロー氏や宇宙船開発ベンチャー、スペースX社など民間企業は、これを機に宇宙の商業利用を推し進めようとNASA主導プロジェクトへの関与を深めている。

 同氏は、プロジェクト協力に対する見返りとして月の採掘権を要求。そのベースには、小惑星に豊富な希少金属が存在する可能性を指摘した調査結果がある。「月の所有権を明確にしなければならない時期が来ている」とビゲロー氏は主張する。

◆月の採掘拠点

「いずれ月面基地は、コマーシャルベースに乗った恒久的な拠点へ成長するだろう。しかし月の所有権が不明確な状態ではだれも投資しないし、危険な事態を招きかねない」と同氏。

 一方、民間及び国家宇宙航空に関する技術開発を管轄するFAAには、ロケット打ち上げや軌道上からの大気圏再突入に関する規定があるだけで、宇宙船の活動については権限がないという。民間企業による宇宙開発の促進を目的とした商業宇宙活動法(Commercial Space Act)にも、月での採掘活動について何も言及されていない。

◆月は資源が豊富

 近年では、ワシントン州ベルビューのプラネタリー・リソーシズ(Planetary Resources)社など、小惑星での鉱業を目的とした多数の新興企業が勃興。レアアースやプラチナなどの希少金属を、地球近傍を周回する隕石から採掘するプランを発表している。

 ビゲロー氏はNASAとの会見の場で、「形成以来、月の裏側には小惑星が何度も衝突している」と語り、レアアースなどの貴重な資源が月面から容易に採掘できるはずと主張。

 ビゲロー社設計の月面用拡張型モジュールは、月の軌道上で組み立てを終えた後、単独着陸も可能だという。

◆法律的な障害

 だが、バージニア州スプリングフィールドにあるMobius Legal Groupに所属する宇宙法の専門家ジェームズ・ダンスタン(James Dunstan)氏によると、月ロケット打ち上げや重い鉱物を地球まで運ぶコストを別にしても、月での採掘作業には法律的な障害が多いという。

 宇宙探査の推進派は、アポロ計画の時代から月の所有権の明確化を求めてきたが、国際的な宇宙法の基礎となる宇宙条約(月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約)では、国家が月の領土権を主張することを禁じている。月の資源の所有権譲渡は、この条約の網を払いのけないと現実化しないだろう。

◆民間との連携

 NASAは既に、ISSへの物資供給を民間企業2社と提携して進めており、おおむね高い評価を得ている。

 さらにNASAは昨年、小惑星を捕捉して月の軌道に乗せる探査ミッションを発表。2021年の実現を目指すという。ビゲロー氏は、「民間セクターとNASAが連携を深める良い機会だ。大きなメリットが生まれることだろう」と意欲を語っている。

Photograph by Universal History Archive/UIG/Getty Images

文=Dan Vergano

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