「死の水域」、地球温暖化で恒久化か

2009.01.28
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2009年1月に発表された研究によると、このまま地球温暖化が進めば魚類などの海洋生物が激減する恐れがあるという。

 東部太平洋と北部インド洋(写真)を対象として、この先10万年の間に地球温暖化が生物の住めない「死の水域」に及ぼす影響が検討された。その結果、死の水域は拡大し、恒久的な現象になる可能性が示唆された。

Photograph by James P. Blair
「死の水域」として知られる低酸素の海域は、今後何千年も続くことになるかもしれない。新たにデンマークの研究チームが行ったコンピューター・シミュレーションが予測している。 低酸素海域の拡大と気候変動に関係があることは以前から指摘されていたが、大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると、大量の海洋生物が一掃され、生態系が作り変えられてしまう可能性があるという。

「地球温暖化で拡大する死の水域は、数千年にわたって続く恒久的な現象になる」と研究を率いたコペンハーゲン大学のゲイリー・シェイファー氏は語る。

 今回のシミュレーション・モデルでは、東部太平洋と北部インド洋を対象として、今後10万年の間に地球温暖化が死の水域に及ぼす影響が検討された。その結果、温暖化が進むと現在は全海洋の2%にも満たない死の水域が2100年までには10倍以上に増えると予測されたという。二酸化炭素濃度がこのまま上昇した場合、全海洋の5分の1を超える領域が生物のいない死の世界となるかもしれない。

「現存する死の水域は一時的なもので回復可能な場所が多いが、二酸化炭素などの温室効果ガスの影響でそうした領域が拡大すると、数千年にわたって存続する可能性が出てくる。人間の活動で大気中に放出された大量の二酸化炭素は、この先何万年にもわたって残存し続けるだろう。したがってその間は、地球温暖化、海洋温暖化、酸素量の低下が続くことになる」とシェイファー氏は説明する。

 シミュレーション・モデルからは、海洋が酸素を保持する力も地球温暖化によって低下することが分かった。冷たい水に比べて温かい水は酸素を含有しにくいので、暖められた空気によって海水温が上昇すると酸素濃度は低くなる。それにつれて深海の酸素量も減少するという。加えて、南極や北極ではしだいに海氷が溶けつつあり、そこにプランクトンや貝類などが流入してきている。生物が息絶えると死体は海底でバクテリアに分解されるが、そのバクテリアも酸素を消費するので海中の酸素はさらに少なくなる。

 この研究は「Nature Geoscience」誌の最新号に掲載されている。

 イギリスのリーズ大学古環境学教授のポール・ウィグナル氏は、今回の予測結果を「海洋の破滅シナリオ」と称した。

 同氏はこの研究には直接関わっていないが、予測された状況は同氏が専門とする2億5000万年前のペルム紀(二畳紀)末に起こった「大量絶滅」のメカニズムに重なるという。当時は歴史上最大規模の絶滅現象が地球を覆い尽くしたとみられており、その影響は全海洋生物の95%に及んだとされる。火山噴火から始まった温暖化と海中の酸素量低下が主な原因であったことが分かってきている。

 ペルム紀末には最大で80%の海域が実質的な無酸素状態に陥った。生物が死に絶えた状況はおよそ2000万年も続いたと考えられている。研究を行ったシェイファー氏は、「今後、海洋が無酸素状態にまで至る可能性は少ないが、最悪のケースも考えに入れておくべきだ」と懸念している。

Photograph by James P. Blair

文=Ker Than

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