なぜライオンは今も狩猟の対象なのか?

2013.08.08
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吠える若いオスライオンに近づくサファリカー。ボツワナの中央カラハリ動物保護区で。

Photograph by Ralph Lee Hopkins, National Geographic Stock
 アメリカ政府が、ライオンを絶滅危惧種法(ESA)の保護対象種に加えるか検討している。保護対象になれば、ハンティングで仕留めたライオンを記念品としてアメリカ国内に持ち込むことは禁止される。 筆者の所属する国際動物福祉基金(IFAW)をはじめ、複数の野生動物保護団体が支持しているこの動きは、ある当然の疑問を投げかけるものだ。われわれの生きている間に野生から姿を消すかもしれないこの動物を、なぜ今なお“娯楽”のために殺すことが許されているのだろうか?

 デューク大学の研究者が手がけた直近の研究によると、野生下に生息するライオンの個体数はわずか3万2000頭だという。実際はそれよりはるかに少ないとみる研究者も多い。

 アフリカの森やサバンナからライオンが姿を消している主な原因は、生息地の減少、ならびに人間と野生動物との軋轢(多くの場合、ライオンが家畜を、またときには人間を殺し、人間が報復としてライオンを殺すという形をとる)であるが、トロフィーハンティングが問題をさらに悪化させている。トロフィーハンティングによって毎年約600頭のライオンが殺されており、その中には既に他の脅威によって数を減らしている群れの個体も含まれる。このようなハンティングは持続可能なものではなく、ライオンにとってさらなる脅威となる。

 残念なことに、最大の責任はアメリカ人にある。アフリカで娯楽目的に殺されたライオンの約60%は、ハンティングの記念品(トロフィー)としてアメリカに持ち込まれている。

 危機に瀕している種の健康な個体を殺すという以外に、トロフィーハンティングがライオンにとって非常に有害である理由はいくつかある。成体のオスは、富裕な外国人のハンターたちから記念品として特に狙われやすい。成体のオスが殺されると、そのライオンが属していた群れが不安定になり、外から来たオスたちが群れを支配しようとして争うため、さらに多くのライオンが死ぬ可能性がある。

 新しいオスが群れを支配すると、そのオスはしばしば前のリーダーの子どもを殺すため、群れの中の一世代が丸ごと失われる。

 また、トロフィーハンティングは進化の法則に反している。部屋に飾って見栄えがするように、群れの中から大きく、強く、健康なオスを選んで殺すからだ。このようなオスは、自然環境下では長く充実した一生を送り、自分のメスや子どもを守り、遺伝子を次の世代に伝える重要な個体だ。

 トロフィーハンティングは地元の人々に多額の利益をもたらし、彼らを貧困から救っているといういい加減な主張もあるが、それを裏付ける証拠はない。国際狩猟鳥獣及び野生生物保全国際評議会(CIC)のような狩猟を支持する団体でさえ、トロフィーハンティングが生み出す利益のうち、当該地域のコミュニティーにわたっているのはわずか3%に過ぎないと報告している。残りは当該国の政府や国外のハンティング用具業者にわたっている。

 ハンティングがアフリカにもたらす利益は、ただ野生動物を見に来るだけの観光客がもたらす莫大な収益とは比べものにならない。今後もライオンや他の動物がアフリカから減り続ければ、環境にやさしいツーリズムというこの重要な収入源は途絶え、アフリカ全土の人々が損害をこうむるだろう。

 持続可能なライオンのハンティング手法を広めようという試みは、何十年も前から議論されている。しかし、ライオンの数は今も減り続けており、ハンティング業界の体質も変化には程遠いようだ。年を取り、自らの遺伝子を残し終えたライオンだけを狙うという新たな手法も話題になったが、実行するのは難しく、正確な年齢も仕留めてみないとわからない。

 アフリカライオンは現在、絶滅危惧種法(ESA)の保護対象になっていない唯一の大型ネコ科動物だ。アフリカライオンを絶滅危惧種に指定し、ハンティングの記念品としてのアメリカへの持ち込みを禁止することは、アフリカライオンが絶滅の危機に瀕しており、手遅れ、または保護にかかる費用があまりに甚大になる前に、世界が協力してそれを食い止める必要があるという、重要なメッセージになるだろう。

 ライオンを娯楽のために殺す行為が一般的かつ合法である限り、このメッセージが聞き届けられることはないだろう。いずれ裕福なアメリカ人がお金を払って殺してしまう動物を、わざわざお金をかけて保護する意味はないのだから。

≪ 国際動物福祉基金(IFAW)北アメリカ担当責任者、ジェフ・フロッケン(Jeff Flocken)氏より寄稿 ≫

Photograph by Ralph Lee Hopkins, National Geographic Stock

文=Jeff Flocken, IFAW

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