希少なシャチ“タイプD”、実は新種?

2013.07.01
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亜南極海を泳ぐシャチの亜種「タイプD」。その異形な姿から、かつては遺伝子異常と考えられていた。

Photograph courtesy Jean-Pierre Sylvestre
 その異形な姿から、遺伝子異常と考えられてきた「タイプD」のシャチ。最近の研究で新種の可能性が出てきた。 南洋に生息する希少な「タイプD」は、4タイプに分類されているシャチの1タイプ。この度、1955年に博物館に寄贈された骨格を用いて、ゲノム解析が実施された。

 タイプDが初めて確認されたのは1955年。ニュージーランドの海岸に群れごと打ち上げられていたが、普通のシャチと異なる姿形が注目を浴びた。通常のシャチ(タイプA、B、C)の身体は流線型で、両目上方にアイパッチと呼ばれる白くて大きな模様がある。タイプDはアイパッチが小さく、大きな頭部は球根のように丸い。

 座礁していたタイプDの群れは数枚の写真が撮られ、1体の骨格が北島ウェリントンにあるニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワに収蔵された。

 米国海洋水産局の海洋生物学者ロバート・ピットマン(Robert Pitman)氏によると、タイプDの目撃例はほかに存在せず、最近まで突然変異の個体だと思われていた。

 しかし、座礁事件から50年以上過ぎ、ピットマン氏ら研究者が資料の本格調査を開始。異形なシャチの報告書がほかにも見つかり、ニュージーランドの群れが唯一の目撃例でないことがわかった。

「実際には南極水域のいたる所で写真が撮られていた。この海域は常に天候が悪く、科学者による調査が難しい。希少とされてきた原因だろう」と、ピットマン氏は説明する。 新たな発見を受けピットマン氏のチームは、2010年にタイプDのユニークな体型に関する研究成果を発表した。

 普通のシャチとの身体的な違いは明らかだが、新種かどうかの見極めには遺伝子検査が不可欠だ。しかし、目撃例が少なく、新鮮な組織の入手が難しい。

 そこで目を付けたのが、ニュージーランドの博物館が50年前に収蔵した骨格だ。

「将来を見越して、試料を保存しておいてくれた先人たちに感謝したい。本当にラッキーとしか言いようがない」とアメリカ、カリフォルニア州ラホヤにある南西漁業科学センターの海洋生物学者で研究共著者のフィリップ・モリン(Phillip Morin)氏は語る。

 研究チームは骨格の一部を利用し、タイプDのゲノムマップを作成。その結果をタイプA、B、Cと比較し、4タイプすべての遺伝的相違を明らかにした。

 タイプDは約40万年前に遺伝的に枝分かれし、新種か亜種になった可能性が高い。ただし、さらなる証拠が見つかるまで断定はできない。

「シャチの研究は始まったばかりで、まだまだ不明点が多い。とにかく、もっと多くの個体を調査しなければならない。シャチの世界は、思っている以上に多様性が高い」とモリン氏は話している。

 今回の研究結果は、「Polar Biology」誌オンライン版に6月14日付けで掲載されている。

Photograph courtesy Jean-Pierre Sylvestre

文=Lara Sorokanich

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