三畳紀末の大量絶滅、原因は溶岩の噴出

2013.03.26
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コロンビア大学ラモント・ドハティー地球研究所の地質学者ポール・オルセン氏。イングランド南部の海岸の崖で、2億156万4000年前の三畳紀/ジュラ紀境界(Tr-J境界)の大量絶滅に近い時期の岩石を採集している。

Photograph courtesy Kevin Krajick, Columbia University Earth Institute
 三畳紀の終わりに、地球上の陸と海の生物の少なくとも半分が絶滅した。これを契機に恐竜が勢力を拡大し、その後1億3500万年にわたり地球を支配することになる。専門家の間では長らく、この大量絶滅の原因は大規模な火山の噴火と考えられていたが、これまでその正確な年代は特定できていなかった。 このほど発表された研究によると、多数の動植物種が化石にその痕跡を残さなくなるのと同時期に、非常に大規模な溶岩の噴出が起こっていることが確認された。この溶岩がアメリカ一国の上に堆積したと仮定すると、その高さは90メートルを超える計算になる。

 今回の研究の主著者で、ワシントンD.C.にあるカーネギー研究所で地質学を研究するテレンス・ブラックバーン(Terrence Blackburn)氏は次のように説明してくれた。

 2億100万年ほど前に、超大陸パンゲアがプレートの運動によって分裂を始めたが、このとき、地殻の下にあるマントルの岩石が溶けて、これほど大きな噴出につながったというのだ。

 このとき噴出した溶岩は洪水玄武岩と呼ばれる。60万年の間に4回に分けて噴出したが、そのうち最初の火山活動が、多くの生物種の絶滅につながったとブラックバーン氏は見ている。

 古代のワニの祖先や、コノドントというウナギのような生物、哺乳類型爬虫類とも呼ばれる獣弓類など多数の生物種が、このとき根絶したと見られる。というのも、この時期を境に化石として残らなくなっているからだ。

◆ジルコンはタイムカプセル

 これまで、この溶岩の噴出の時期には100~300万年の誤差が想定されていた。そのため、溶岩の噴出と大量絶滅のどちらが先に起きたのか、はっきりしていなかった。

 ところが今回の研究では、玄武岩などの火成岩に含まれる希少鉱物のジルコンを使って、この誤差範囲を2~3万年までに縮めることができた。これによって、最初の噴出は大量絶滅の直前に起こったものと特定できた。

「ジルコンはこれらの岩石の年代を特定する上で完璧なタイムカプセルだ」とブラックバーン氏は言う。ジルコンは結晶化の際にウランを取り込みやすい。そしてウランの原子核は一定の期間で崩壊し、鉛の原子核に変化する。それゆえ、試料に含まれるウランと鉛の比率を測定することで、その結晶の年代を特定できるとブラックバーン氏は説明する。

 大量絶滅が溶岩の噴出の最初の段階で起こったと正確に確認できたことで、今後は気候モデルなどを専門とする研究者らによって、この絶滅を引き起こした具体的な要因(たとえば気候変動など)が特定されるのではないかとブラックバーン氏は言う。

 溶岩の噴出の最初の段階で大気中の二酸化炭素量が2倍になり、地球規模の気温上昇や海水の酸性化につながったことを示す証拠は見つかっている、とブラックバーン氏は言う。これらは急速に起こったため、ほとんどの生物はその変化に適応しきれなかった。

 ただし、2度目以降の溶岩噴出の際には生命の復活のきざしが見られるとブラックバーン氏は言う。これはブラックバーン氏にとって驚くべきことだったそうだ。

 たしかに、2度目以降に噴出した溶岩の量は、初回ほどは多くない。しかし別の研究グループによれば、大気中の二酸化炭素量はやはり噴出のたびに増加しており、大量絶滅の際の気候条件がその後も続いていた可能性が指摘されている。

 大量絶滅を生き延びたと見られる生物種が、いかにして新しい気候に適応できたのかは、いまだ不明である。

◆隕石衝突説の陰で

 大量絶滅は歴史上何度も起こっており、そのすべてに大規模な火山の噴火が関係していると、カリフォルニアにあるバークレー地質年代学センターで岩石の年代特定を専門にするポール・レニ(Paul Renne)氏は言う。しかし、火山活動が主な生物種を一掃するほどの役割を果たしたとする説は、これまであまり検討されておらず、大量絶滅には隕石の衝突が関係しているとする仮説のほうが好まれてきた。

 たとえば6500万年前の白亜紀/第三紀境界(K-T境界)と呼ばれる時期には恐竜が大量絶滅しているが、これとほぼ同時期に隕石の衝突があったことを裏付けるたしかな証拠が見つかっている。

「この1つの事例が皆の考え方を方向づけてしまい、隕石の衝突が大量絶滅につながったという見方がすっかり一般的になってしまった」とレニ氏は言う。レニ氏は今回の研究には参加していない。

 しかしレニ氏は、大規模な火山の噴火こそが大量絶滅の原動力であったと見ており、ブラックバーン氏らの最新の研究によって、三畳紀末に起こった溶岩の噴出と大量絶滅という2つの出来事を結びつけて考える根拠が強まったと見ている。

 レニ氏は、K-T境界の大量絶滅に際しても、インドで始まった大規模な火山の噴火が主要な役割を果たしており、隕石の衝突はそこへとどめの一撃を加えたにすぎないという可能性を指摘している。

 三畳紀末の大量絶滅と溶岩の噴出の関係についての今回の研究は、3月21日付で「Science」誌オンライン版に発表された。

Photograph courtesy Kevin Krajick, Columbia University Earth Institute

文=Lacey Gray

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