恐竜絶滅、火山と隕石の複合原因?

2013.01.14
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隕石衝突から逃れる恐竜の想像図。

Illustration by Mark Garlick, Science Source
 恐竜を絶滅させたと考えられている隕石に関して、新たな知見が得られた。隕石の衝突は“最後の一撃”にすぎず、そのはるか以前に始まった火山噴火を原因とする気候変動により、恐竜たちは既に追いつめられていた可能性を示唆するものだ。「(隕石の)衝突はとどめの一発だった」と、カリフォルニア大学バークレー校の地質学者ポール・レニ(Paul Renne)氏は声明の中で述べている。

 レニ氏らのチームが発表した今回の研究成果は、恐竜を絶滅させた真の原因をめぐる議論に拍車をかけるものだ。かつては“犯人”は隕石か、それとも火山噴火による気候変動かをめぐってたたかわされていた議論は、今では複数の環境因子が関与した可能性を検討する議論へと発展している。

 レニ氏らのチームはこのほど、現在のメキシコにあるユカタン半島で発生した隕石の衝突に関して、これまでで最も正確な年代を割り出した。

 高精度の年代測定法を用いて、問題の衝突の際に形成され、ハイチで採取されたテクタイト(隕石衝突によって作られる小石大の岩石)を調べた結果、研究チームは衝突が起きたのは6603万8000年前だと結論づけた。これまで考えられていたより少し後だ。研究チームによると、新たな衝突の推定年代は恐竜絶滅の時期と誤差の範囲内で一致し、2つは同時期に起こったことになるという。

 しかし、だからといって、いわゆるチクシュルーブ・クレーターを形成したこの隕石が恐竜絶滅の唯一の原因だったというのではない。

 これまでの研究が示唆するところでは、隕石衝突より前に現在のインドで起こった大規模な火山噴火も一因となった可能性がある。噴火による気候変動が、既に一部の恐竜を絶滅させつつあったかもしれないのだ。

 例えば「衝突でできた地層からは非鳥類型恐竜の化石はいまだ見つかっていない」と、レニ氏は電子メールでの取材に対して述べている。「したがって厳密に言えば、非鳥類型恐竜(現在の鳥類とは無関係の恐竜)は衝突が起きたときには既に絶滅していた可能性がある」。

◆空から降り注いだ死

 火山活動が恐竜絶滅の原因だとする説は、実は隕石衝突説よりも古く、地球で発生した他の大量絶滅のデータにはうまく合致する。「他の大量絶滅の多くは、大規模な火山噴火と同時期に発生したことが明らかになっている」とドイツ、ブレーメン大学の古海洋学者ハイコ・ペリケ(Heiko Palike)氏は述べる。

 ところが1980年代になって、物理学者のルイス・アルバレス(Luis Alvarez)と惑星科学者のウォルター・アルバレス(Walter Alvarez)父子が大胆な新説を発表した。アルバレス父子は、世界中に見られる白亜紀末の粘土層にイリジウムが豊富に含まれることを発見した。イリジウムは地球上には少ないが、隕石には多く含まれる元素であるため、2人は隕石が恐竜を絶滅させたとする説を唱えた。

「隕石衝突説はより物理的な分野の研究者から特に支持を集め、(中略)それに伴い噴火説は支持を失った」とレニ氏は述べる。

 1990年代に入って、衝突説はさらに勢いを増した。ユカタン半島に、恐竜が絶滅した白亜紀/第三紀境界(K-T境界)のものとみられる直径180キロのクレーターが発見されたのだ。

 このクレーターを作った物体は直径10キロほどあったと推定される。そのサイズの隕石が地球に衝突すれば、壊滅的な影響をもたらしたはずだ。すさまじい衝撃波が起こり、世界中で山火事が発生し、津波が押し寄せ、溶けた岩石の“雨”が大気圏に再突入したと予想される。

 それに加えて、「多くの粒子状物質が大気中に浮遊し、その状態が数週間、数カ月、ことによると数年間続き、太陽光を遮って植物を枯死させ、壊滅的な気温低下を引き起こしただろう」と、アメリカ、ワシントンD.C.にある国立自然史博物館の古生物学者ハンス・ディーター・スーズ(Hans-Dieter Sues)氏は述べる。

◆噴火と衝突の複合説

 ところが、一度は捨て去られた噴火説が、近年になって若干の盛り返しを見せている。現在のインドでかつて火山活動が続いた時期に関する新たな知見が得られ、また、恐竜の多様性が隕石衝突前から既に低下していた可能性が明らかになったためだ。

 現在議論の焦点は、「多くの研究者が主張するように、チクシュルーブ・クレーターを形成した衝突は(絶滅の)“単独犯”なのか、あるいは『オリエント急行の殺人』のように複数の原因の1つにすぎないのか」に移っているとスーズ氏は言う。

 レニ氏が支持する説は、現在デカントラップと呼ばれる溶岩流を形成したインドの一連の火山噴火が長期の寒波などの劇的な気候変動を引き起こし、それが隕石の衝突以前から既に恐竜たちを追い込んでいたのではないかというものだ。

「噴火が十分な規模と速さで起これば、それ単独で絶滅の原因となりうることは明白だと思われる。したがって私は、隕石衝突はおそらく最後のとどめにはなったが、それだけが原因ではなかったと考えている」とレニ氏は言う。

◆残る疑問

 しかし、この新たな複合説には、依然としていくつかの大きな疑問が残る。インドの火山噴火が厳密にどの程度恐竜に影響を与えたかといったことだ。

「(1991年の)ピナトゥボ山噴火では、放出されたエアロゾル粒子と塵のために地球の温度が短期間低下したことを指摘する人もいる」とペリケ氏は言う。しかし「一方では、長期的に見て火山はおそらくそれ以上の二酸化炭素を大気中に放出しており、実際には少なくとも一時的に地球の温度を上昇させるという意見もある」。

 また、デカントラップを形成した噴火がどのくらいの時期にわたって発生したのかもわかっていない。「白亜紀が終わる数百万年前に始まって数百万年後に終わり、(隕石衝突)より後まで続いたことはわかっている。しかし、一連の噴火が数万年の期間内に起こったとする説もある」とペリケ氏は述べる。

 ペリケ氏によると、噴火の時期を特定することは重要だという。白亜紀の終わり近くに集中して起こったとすれば、それより200万年早く起こった場合に比べて、恐竜絶滅の一因となった可能性が高くなるからだ。

 今後、インドの火山灰層のより正確な年代測定を行うことで、残る疑問のいくつかはクリアになるとペリケ氏は考えている。「それが謎の解明へ向けた次のステップだ」。

 今回の研究は2月8日号の「Science」誌に発表された。

Illustration by Mark Garlick, Science Source

文=Ker Than

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