霧が水銀を内陸へ運ぶ、カリフォルニア

2012.12.05
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カリフォルニア州ビッグ・サー付近の海から押し寄せる大量の霧。

Photograph by Jane J. Lee, National Geographic
 アメリカ、カリフォルニア州の海岸沿いに広がるアメリカスギ(レッドウッド)の森。この地域は非常に雨が多く、海から毎晩押し寄せるジメジメした霧で知られている。ところが最近になって、この大量の霧の中に水銀という“招かれざる客”が紛れ込んでいる事実が明らかになった。 重金属元素の水銀は、旧式の体温計で使用されている銀色の液体。これまでの研究で、同州中部のサンタクルーズ周辺でサンプリングした霧に含まれていることは確認されていたが、発生源まではわからなかった。サンフランシスコで開催中のアメリカ地球物理学連合の年次会合で発表された最新の研究結果では、水銀は海から発生した可能性が高いとしている。

 霧中の水銀は微量なので、周辺地域を歩き回っても害にはならない。カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)の大気化学者ピーター・ワイス・ペンジアス(Peter Weiss-Penzias)氏によれば、マグロの缶詰の方が含有量は高いという。しかし霧は、カリフォルニア中部沿岸の水循環において重要な役割を担っている。植物や動物に取り込まれると食物連鎖の過程で生物濃縮され、生態系にとって脅威となる。

 ワイス・ペンジアス氏らは今春、モントレー湾の水面から水深約1000メートルまでの海中で、不安定な有機水銀化合物であるジメチル水銀のガス濃度を測定。200メートル付近で最高濃度になると確認した。「200メートルより浅い一帯ではジメチル水銀は安定性に欠けるため、分解して、一部が大気中へと放出されているのだろう」と同氏は説明する。

 さらに今回の研究は、海から放出された水銀が陸地へと移動する手段は60~99%が霧であることを示している。霧中の水銀濃度と合わせてワイス・ペンジアス氏は、カリフォルニアの場合は海が発生源であるのはおそらく間違いないと考えている。自身の仮説を検証するため、海上でジメチル水銀を測定するほか、霧とともに運ばれてくる可能性のある殺虫剤など他の汚染物質についても調査を予定しているという。

「水銀の発生源は小さな謎に過ぎないが、沿岸の海洋深層水上昇(湧昇)という大規模現象にも関わっているのではないかと思う」と同氏は声明で述べている。

Photograph by Jane J. Lee, National Geographic

文=Jane J. Lee

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