ドラゴン、ISSへ初の正式な物資輸送

2012.10.11
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10月10日、国際宇宙ステーション(ISS)のロボットアームが、カプセル型宇宙船「ドラゴン」をつかんでいるところ。NASAの映像からの静止画像。

Video still from NASA TV via AP
 民間ロケット会社スペースX社のカプセル型宇宙船「ドラゴン」が、国際宇宙ステーション(ISS)とドッキングすることに成功した。ドッキングは5カ月ぶり2度目の成功で、今回はNASAとの契約に基づく初の正式な物資輸送となる。「どうやらドラゴンを手なずけたようだ」。米海軍所属でISSのコマンダー(船長)を務めるスニータ・ウィリアムズ(Sunita Williams)氏は、米国東部標準時間の午前7時前、日本人宇宙飛行士の星出彰彦氏の操作により、ISSのロボットアームが無人宇宙船の機体をつかんだのを見て、地上の管制官にこう告げた。「仲間に加わってくれて嬉しく思う」。

 スペースXのドラゴンは、ISSにドッキングする最初にして目下唯一の民間宇宙船として、地上406キロの上空にある同宇宙ステーションに接続を果たした。総重量450キロに及ぶ貨物には、必需品である物資や機材のほか、おそらく必需品ではないチョコとバニラのアイスクリームや、学校向けの科学実験に用いるペースト状玩具「シリーパティー」などが含まれる。

 スペースXは、ペイパル社の共同創設者イーロン・マスク(Elon Musk)氏が創設した野心的企業で、2008年にNASAとの約16億ドルの契約を勝ち取り、今後12回にわたってISSに物資を輸送することになっている。

 政府所有のISS補給機と違い、スペースXのドラゴンは無傷で地球に帰還するように作られているため、往復輸送に利用できる。2012年5月のテストミッションでは、ISSにドッキングして科学実験設備や宇宙用ハードウェアなど590キロ分の貨物を持ち帰っており、今回も貨物を積んで今月中に帰還する予定だ。

◆スペースXとの契約は未来への投資?

 今回、NASAとの契約に基づき、民間の物資輸送機がISSと初の正式ドッキングを果たしたことは、記念すべき一歩として、また今後おそらく増えるであろう民間輸送の先駆けとして広く賞賛されている。

「NASAとの契約の下でドッキングを成功させたことは、民間航空産業でいえば草創期の出来事に匹敵するだろう」と、ジョージ・ワシントン大学の宇宙政策名誉教授で長年NASAのアドバイザーを務めるジョン・ログスドン(John Logsdon)氏は話す。

「政府が航空会社に郵便物の輸送業務を委託することで、初期の航空産業は成長に必要な経済的支援を獲得した。明らかに、それと同じことをNASAは望んでいる。ISSへの物資輸送を民間宇宙会社に委託することで、初期の民間宇宙産業が大きな推進力を獲得することを」。

 ドッキング成功後に発表された声明の中で、NASAのチャールズ・ボールデン長官は次のように述べている。「これはアメリカにとって新たな宇宙探査時代の始まりとなる。今後は地球低軌道ミッションのコストを抑え、月の周回や小惑星、そしていずれは火星を目指す有人の深宇宙探査にリソースを集中できるようになる」。

◆夢は火星へ

 ドラゴンがこれまで打ち上げに3度、ISSとのドッキングに2度成功したことで、民間宇宙輸送の実現性は間違いなく高まっている。それでも、スペースXのマスク氏は10月7日の打ち上げ前に、同社の打ち上げが常に成功すると考えるのは時期尚早だと語っている。

 ほどなく、マスク氏の見立ては正しいことがわかった。ドラゴンを搭載して地球の大気圏外まで運ぶロケット「ファルコン9」のエンジン9基のうち1基が、打ち上げの際に故障したのだ。しかし、ファルコン9の推進システムはNASAのロケットと同様に、エンジンすべてが点火しなくとも打ち上げられる設計になっているため、故障は打ち上げに影響しなかったとスペースXは説明している。

 ドラゴンは当初、10月11日に積み荷が降ろされる予定だったが、実際にはそれより早く、米国東部標準時間の10日午後1時40分にハッチが開けられた。NASAによると、ISSのクルーがドッキング後の作業を迅速に行ったためだという。

 ドラゴンは数週間後に地球に帰還し、10月28日にパラシュートを用いて太平洋に着水する予定だ。

 スペースXの主な目標はISSに物資を輸送し、また数年以内には人間も運ぶことだが、CEOのマスク氏はそれよりはるかに大きな夢を描いている。同氏が宇宙ビジネスに参入したのは、火星に相当数の人員を運べるロケットを開発するという究極の目標をかなえるためだという。

Video still from NASA TV via AP

文=Christine Dell'Amore

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