キュリオシティ、いよいよ本格稼働へ

2012.09.14
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火星探査車キュリオシティのロボットアームは、岩石や土壌のクローズアップ撮影を目的とするMAHLIカメラを装備する。 Photograph by NASA/JPL-Caltech/MSSS
「9月13日にはロボットアームのテストが完了し、キュリオシティ(マーズ・サイエンス・ラボラトリ)はいよいよ本格稼働に入る」。NASAジェット推進研究所(JPL)の9月12日の記者会見で、ミッションマネージャーのジェニファー・トロスパー(Jennifer Trosper)氏が発表した。 最初の目標は、アーム操作による科学調査に適した岩石の発見だ。

 キュリオシティには、惑星探査機として過去最高の高機能ツールが装備されている。岩石の成分を分析するX線スペクトロメーター、クローズアップ撮影用の高解像度カメラ、アームで採取した試料を分析する化学装置などだ。

 探査の最大の目標は、生命体を構成し得る有機化合物の存在、または過去に存在した証拠の発見である。否定の結果が出ても、その確証が得られれば目標達成といえる。

 キュリオシティはまず、3種類の岩石が存在する地域「グレネルグ」を目指す。しかし最終目的地は、6キロほど先にある標高5500メートルのシャープ山だ。

 ゲイル・クレーターの中心にそびえ、多くの地層が積み重なってできている。しかも完全に露出しているため、火星の歴史の新事実が明らかになる可能性がある。クレーター中心に形成された理由の解明も注目度が高い。火山活動の跡が見られないため、循環する強風の侵食作用という仮説もある。

 造山過程はともかく、シャープ山が火星の地質研究に最適なことは間違いない。30億年以上前に形成されたゲイル・クレーターと同程度の地史を、積み重なる地層から分析できそうだ。まずは裾野を徹底調査し、その後は寿命が続く限り斜面を登っていくという。

 キュリオシティは今後2年にわたり、火星の地表を移動しながら試料を採取・分析、画像データを地球へ送信する。スピリットなどの前任機と同様、活動期間の2年を終えてもバッテリーは長持ちしそうで、シャープ山登頂に成功する可能性も十分にある。ただし、予算不足のNASAに余力があればの話だ。

◆キュリオシティは賢くなる?

 キュリオシティの探査活動は、驚きと発見、困難が盛りだくさんの冒険になるはずだ。

 NASAのソフトウェア開発者でキュリオシティの操作を担当するジョン・ライト(John Wright)氏は、スピリットの遠隔操作も経験しているベテランだが、「キュリオシティの方がはるかに難しい」と話す。大型の機体や大量の観測機器、山を登るという困難な任務のほか、4000通り以上の操作が可能な多機能化も一因という。

 毎日の移動経路と発進のタイミングは当日に制御コードとして機体に送信されるが、キュリオシティには自分で考える柔軟性もある。ただし、前任機より多くの自己判断ができるため、従来とは異なるアプローチで集中的な監視が必要となった。

 キュリオシティは自律ロボットとして進化を遂げているが、人工知能は搭載していないと担当チームは明言する。

 障害物を避けて走行するなど、自己判断を下す能力はスピリットやオポチュニティも持っていたが、その“経験”が残ることはなかった。自律性の高いキュリオシティは、過去の動作や移動先をすべて記憶するという。

 しかし、記憶機能の導入によって、担当チームは実際の移動経路だけでなく、キュリオシティの記憶に残る経路も把握しなければならなくなった。

 操作担当のライト氏は次のように語る。「ソフトウェアの開発者は使い勝手の向上を目指し、探査車を賢くした。“記憶力”を高めて高度な自己判断ができれば、動作を事細かに指示する手間が省ける」。

「しかし、操作担当者は記憶内容をすべて把握しておかなければならない。チームとキュリオシティで所在地の認識が異なり、問題が起こるケースも考えられる。キュリオシティが何を考えているのか、監視が常時必要となるだろう」。

Photograph by NASA/JPL-Caltech/MSSS

文=Marc Kaufman

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