のろいサメ、眠ったアザラシを捕食?

2012.06.27
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カナダ、ヌナブト準州のニシオンデンザメ(資料写真)。

Photograph by Paul Nicklen, National Geographic
 世界一のろいサメは、睡眠中のアザラシに忍び寄って捕食している可能性が明らかになった。 北極圏に生息する「ニシオンデンザメ」は主に魚をエサとするが、胃の中からはアザラシの一部も見つかっている。

「残骸の多くは新鮮で、クモヒトデや端脚類(ヨコエビの仲間)など肉食性の無脊椎動物が付着していなかった。ニシオンデンザメが生きたアザラシを捕食していると確信した」と、調査を指揮した国立極地研究所の海洋生物学者、渡辺佑基氏はメールでコメントしている。

 研究チームは、北極圏にあるノルウェー領スバールバル諸島周辺のニシオンデンザメにGPSを利用した測定器を付けて動きを追跡。その結果、最高遊泳速度がほとんどのアザラシの半分程度と判明した。

「“のろい”にも程がある。体長3メートルのサメが人間の赤ちゃんのハイハイ程度で移動しているとは驚きだった」と渡辺氏は述べる。

 同氏は遅い動きを考慮して、ニシオンデンザメはアザラシが眠っている隙を狙うという仮説を立てた。北極圏のアザラシはホッキョクグマを避けるため、海氷上ではなく水中で眠ると考えられている。

 渡辺氏は個人的な経験から、ニシオンデンザメの不意打ちに気付かないほどアザラシの睡眠が深いことも知っている。以前、北極海に浮かんでいるアザラシを見つけ、死んでいると思ったという。「実際に触ることもできた。すると突然動き出し、潜水していった」と同氏は振り返る。

◆ハンティング方法はいまだ謎

 アメリカ、マサチューセッツ州海洋漁業局(MDMF)の海洋生物学者グレゴリー・スコマル氏も、音響発信タグを用いて追跡したことがある。スコマル氏はニシオンデンザメがカモフラージュと遅い動きを利用して、アザラシを待ち伏せしていると提案した。

「今回の論文をはじめ、さまざまな仮説が立てられているが、正解はまだ見つかっていないと思う」と同氏は話す。「アザラシを襲う方法を示す決定的な証拠が足りない」。

 渡辺氏はアザラシの残骸に無脊椎動物が付着していないと述べている。しかしスコマル氏は、死んだアザラシをエサにする可能性も排除できないと指摘する。「大きなサメが口を開けて食べ始めれば、無脊椎動物が死んだアザラシからすぐ離れることは十分ありうる」。

 睡眠中のアザラシの襲撃説を裏付けるため、渡辺氏のチームはニシオンデンザメにカメラを取り付けて調査する予定という。

 今回の研究結果は、海洋科学誌「Journal of Experimental Marine Biology and Ecology」オンライン版に6月8日付けで発表された。

Photograph by Paul Nicklen, National Geographic

文=Helen Scales

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