衛星タイタンの大気、生命には若すぎ?

2012.05.10
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NASAの土星探査機カッシーニが撮影した、タイタンのスモッグ状の大気層。

Images courtesy SSI/NASA
 分厚い大気に包まれた土星の衛星タイタン。最新研究によると、その濃さを増したのは比較的最近のことらしい。期待されていた生命発見の可能性に疑問符が付いたという。 太陽系で十分な大気を持つ衛星はタイタンだけで、地球外生命の存在が以前から有力視されてきた。

「生命を育むには、液体の水、エネルギー源、有機分子の3要素が揃っていると都合が良い」とアメリカ、コロラド大学の惑星科学者サラ・ホルスト(Sarah Horst)氏は話す。

 摂氏マイナス178度のタイタンの表面には、液体の水は存在しない。しかし、液体メタンの湖があり、生物学的に地球上の水と同様の役割を果たしている可能性がある。大気に閉じ込められた太陽光の熱が、エネルギー源として役に立つ。地球と似た効果をもたらすはずだ。

 タイタンで特に注目すべきなのは3番目の要素、有機分子である。地球上の生命に欠かせない炭素系物質だ。「太陽系で最も興味深い場所と言える」とホルスト氏。

 タイタンを包むスモッグ状の大気には、メタンから生成されるさまざまな有機物が混在している。メタンは地球の天然ガスの主成分だが、新研究では大気の年代特定に利用されている。

◆メタンの“重さ”で年代を分析

 アメリカ、メリーランド大学カレッジパーク校のコナー・ニクソン(Conor Nixon)氏の論文では、NASAと欧州宇宙機関(ESA)による土星探査機カッシーニ・ホイヘンス・ミッションのデータを使用している。軌道周回機カッシーニは2004年から土星とその衛星を観測。カッシーニから放出されたホイヘンス・プローブは2005年にタイタンへ着陸した。

 同氏のチームはデータを丹念に調査し、メタン分子に比較的まれに存在する“重い”炭素の兆候を探した。

 タイタンの大気中のメタンは太陽光で容易に分解され、より複雑な有機物質に転換する。その一部は雨となって表面に降り注いでいる。

 一般的な“軽い”炭素(質量数の少ない炭素)を含むメタンは、“重い”炭素を含むメタンよりも若干速く転換する。つまり、長期的には“重い”メタンの相対濃度が徐々に増えてゆく。

 そのため、軽いメタンと重いメタンの比率の変化をたどると、大気中の分子の分解にかかった時間をモデル化できる。さらには、大気自体の年代も推定できるという。

 コナー氏のチームでは、カッシーニとホイヘンスで検出されたメタンの赤外線データと、ホイヘンスが採取した低層大気の直接サンプルを調べた。

 大規模な天体衝突で内部からガスが突然噴出して、最初のメタンが大気に放出されたと仮定した場合、分厚い大気の年代は16億年程度と推定されるという。

◆初期のタイタン、生命存在には寒すぎた?

 コロラド大学のホルスト氏は、「約46億年の太陽系の年齢から考えると比較的最近のようだ」と述べる。

「初期のタイタンには大気がほとんど存在しなかった可能性がある。メタンは温室効果ガスなので、地球と同様にタイタンの表面と大気はある程度の温度を保っている」。温室効果がなければ、窒素が大部分を占めるタイタンの大気は凍って消滅していたかもしれない。

「他の惑星での生命探査に“時間”という4番目の要素を加えるべきだろう。太陽系の中で誕生にうってつけの地球でも、長い時間が必要だった。タイタンの大気の年代が若いとすれば、可能性がやや小さくなったと考えられる」とホルスト氏は語っている。

 今回の研究は「Astrophysical Journal」誌に4月20日付けで発表された。

Images courtesy SSI/NASA

文=Victoria Jaggard

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