小さなクモに大きすぎる脳

2011.12.19
ハエトリグモの1種、学名:Phidippus clarusのメス。

Photograph by Don Johnston, All Canada/Getty Images
 まん丸なクモも決して太っているわけではない。頭でっかちなだけなのだ。小さなクモは、身体のサイズに比べて非常に巨大な脳を持っているため、脳の一部が身体の隙間にあふれ出している場合すらあることが、新たな研究からわかった。 体長1ミリにも満たないようなごく小さなクモが、大きなクモ類と同じくらい上手に網を張ることができる理由が、こうした巨大な脳の存在から説明できるかもしれない。

 スミソニアン熱帯研究所の研究員でコスタリカ大学教授のビル・エバーハード(Bill Eberhard)氏が率いる研究チームは、この研究のため、いずれも網を張る性質を持つ6つの科に属する9種のクモを調査した。

 その結果、小さなクモほど、身体のサイズに対する脳の比率が大きいことがわかった。中には、中枢神経系が身体の容積の80%近くを占め、ときには脚の中にまではみ出している種もあった。

 円形の網を張るマリアナシロカネグモ(学名:Leucauge mariana)など一部の種では、成虫の大きさになるまでの幼虫の期間、詰まった脳で身体が膨れあがっている。

◆寄生グモにも大きな脳が

 身体の容積のうちこれほど大きな部分を脳に取られると、ほかの器官に問題が生じるようにも思えるとエバーハード氏は言う。「だが(その点は)あまり研究されていない」。

 とはいえ、見たところクモ類が大きな脳と引き換えに何かを犠牲にしていると考えるのは筋が通っているようだ。

 例えば、別の研究で調査が行われたハエトリグモの1種(学名:Phidippus clarus)では、成虫の消化器系が腹部ではなく頭胸部の中にある。

 しかし「幼虫ではすべてが脳で占められていて」、赤ん坊は消化器系が未発達なのだという。ただし、このことがこのクモの発達にどう影響するかは今のところ不明だ。

 おそらく、網を張るという行動は、例えば「甲虫の幼虫がただ目の前の菌類を食べ進めていく」というような行動よりも複雑で、大きな脳を必要とするのだろうと、エバーハード氏は研究論文に記している。

 もっとも、網を張る能力を失い、ほかのクモの獲物をこっそり横取りする”盗み寄生者”と呼ばれるクモでも、「脳が相対的に小さいという徴候は見られなかった」とエバーハード氏は話す。

 もちろん、こっそり盗みに入るのにも一定の知能は必要であり、そのため盗み寄生者も網を張るクモと同じくらいの脳を持っているように見えるのかもしれないと同氏は付け加えた。

 クモの脳についての研究は「Arthropod Structure and Development」誌の11月号に発表された。

Photograph by Don Johnston, All Canada/Getty Images

文=Rachel Kaufman