コウモリと食虫植物の奇妙な互恵関係

2011.02.03
食虫植物のウツボカズラから引っ張り出されたコウモリ。

Photograph courtesy Holger Bohn
 最新の研究によると、ボルネオ島のある食虫植物はコウモリの排泄物を主食にしているという。 東南アジアのボルネオ島にある小国ブルネイでは、ハードウィック・ウーリー・バット(学名:Kerivoula hardwickii)の一種と食虫植物ウツボカズラ(学名:Nepenthes rafflesiana)の亜種が互恵的な関係を築いている。ハードウィック・ウーリー・バットはウツボカズラの丸い葉をねぐらにし、身を守る。一方のウツボカズラは昆虫も捕らえるが、必要な栄養をコウモリの排泄物から得ている。

 研究を率いたブルネイ・ダルサラーム大学のT・ウルマー・グラフェ(T. Ulmar Grafe)氏は、「予想外の結果で本当にびっくりした」と電子メールでコメントしている。

 ウツボカズラはおいしそうな蜜で昆虫を誘い、壺のような形をした葉で捕らえる。葉の内側はツルツル滑るため、簡単には脱出できない。壺の底に溜まった酵素で、落ち込んだ昆虫をゆっくり消化していく。

 グラフェ氏が指導する学生が泥炭湿地で別の研究をしているとき、木に巻き付くウツボカズラの一種「N. rafflesiana elongata」の葉の中にコウモリがいるのを偶然見つけた。「引っ張り出してみると、元気に生きていた。われわれの邪魔が入るまで、壺の中で昼寝していたに違いない」と同氏は振り返る。

 コウモリとウツボカズラの依存関係を確かめるため、グラフェ氏らは野生のコウモリを複数捕まえ、背中に発信機を取り付けた。そして、再び自然に放ち、コウモリがねぐらに選んだウツボカズラを特定した。

 コウモリがいないウツボカズラの仲間を対照群とし、ねぐらのウツボカズラと窒素の量を比較してみる。するとそのウツボカズラは、対照群より葉に含まれる窒素がはるかに多かった。必要とする栄養の少なくとも34%はコウモリの排泄物で賄うことができるという。「コウモリが食虫植物になんらかの利益をもたらしているとは予想していたが、これほど依存しているとはね」とグラフェ氏は語る。

 研究論文によると、ウツボカズラは木に寄りかかって成長するため、単独で生えている食虫植物より昆虫を捕らえるのが難しいという。例えば、N. rafflesiana elongataの壺はほかの種より最大で4倍も長いが、昆虫を捕らえる能力は7分の1以下だとグラフェ氏は説明する。

 コウモリにとって、長い壺は好都合だ。体長4センチほどのコウモリなら、積み重なるようにして2匹が中に入ることができる。さらに、壺が長い食虫植物は消化液が少ない上、“ガードル”のような形のおかげで転落も避けられる。

 ウツボカズラにとっては、コウモリの排泄物が生き残りの手段になっている可能性があるとグラフェ氏は指摘する。この共存関係は独自に築かれた可能性が高く、ブルネイのハードウィック・ウーリー・バットとN. rafflesiana elongata以外では確認されていない。

 ただし、排泄物から栄養を得る植物はほかにも少数存在するという。「ボルネオ島の山地に生息する小型の哺乳類ツパイも、食虫植物の壺をトイレ代わりにすることで知られている」とグラフェ氏は話している。

 今回の研究結果は、「Biology Letters」誌オンライン版に1月26日付けで発表された。

Photograph courtesy Holger Bohn

文=Christine Dell'Amore