アラビア海に“ドロドロ”の島が出現

2011.01.27
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パキスタンの海岸を撮影した衛星写真。左が2010年2月、右が今年1月。

Photographs courtesy Jesse Allen and Robert Simmon, EO-1/NASA
 パキスタン沖の青い海に新たな島が出現した。しかし、あわてて休暇届を出すのは思いとどまったほうがいいかもしれない。小さな点に見えるこの島は泥火山で、“千夜一夜”を迎える前に消滅する可能性が高い。 2010年11月下旬、パキスタンの漁師たちから、アラビア海に浮かぶ新たな泥火山の報告が相次いだ。そして今年1月11日、NASAの地球観測衛星EO-1(Earth Observing-1)によって写真(右)に収められた。昨年2月に同じ場所を撮影した写真(左)では確認できない。

 NASAによると、アラビア海では過去にも泥火山の“島”が出現しているが、そのほとんどは数カ月で消えたという。事実、1月11日に撮影された写真でも、泥火山から湯気のように褐色の堆積物が溶け出している。浸食され、近い将来には消える運命にある。

 地下のシルトやそれより細かい粘土の層が、地殻変動や炭化水素ガスの蓄積によって圧力を受けると、地表または海底に泥火山が形成される。

 パキスタンの泥火山はプレートテクトニクスが産み出している。この一帯ではユーラシア大陸に沈み込むアラビアプレートが堆積物を動かし、パキスタンの海岸に平野を、海底に傾斜を形成する。

 平野の下では、プレートの沈み込みによって岩石がマグマ化し、地下水に熱と火山ガスを注入する。酸性に変わった地下水が上部の岩石を溶かし、液状の泥と炭化水素を生成、断層から染み出すようにゆっくりと噴出する。

 ほとんどの泥火山は数センチ~数メートルの高さしかない。しかし、パキスタンの平野では高さ100メートルに成長する場合もある。山頂から噴煙を出し自然発火、空高く炎を上げる姿が目撃されている。

 カリフォルニア州メンロパークにあるアメリカ地質調査所の上級研究員ジェームズ・R・ハイン氏によると、写真の泥火山は海岸から約3キロ離れており、おそらく深さ30~60メートルの海底から水面に突き出ているという。表面の泥は比較的冷えているが、「水飽和している可能性が高い。飽和の度合いによっては、スープのようなドロドロ状態が保たれる」とハイン氏は説明する。

 マグマで熱せられた400度の熱水が噴き出す海底の熱水噴出孔には独自の生態系がある。一方、海底の泥火山、冷水噴出孔も固有の生態系を持つことがあるという。ハイン氏によると、メタンなどの化学物質を主なエネルギー源とする生物で満たされているそうだ。

 このような泥火山が水面に飛び出すのは珍しいとハイン氏は指摘する。島として機能し、生物をはぐくむほど長持ちした例はないが、泥に含まれるバクテリアが波の上で繁殖する可能性もあるという。

Photographs courtesy Jesse Allen and Robert Simmon, EO-1/NASA

文=Victoria Jaggard

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