バクテリアを“栽培”するアメーバ

2011.01.20
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集合し、子実体を形成するキイロタマホコリカビ。この状態でほかの場所に移動する。

Photograph courtesy Owen Gilbert
 先進国の小規模農家は存続が難しいご時世だが、最新の研究によると、一部のアメーバにとっては“小規模な農業”こそが生き抜くための戦略だという。「単細胞のアメーバ、キイロタマホコリカビは食料の土中バクテリアが不足すると、仲間同士で“話し合って”集合する」と、アメリカ、テキサス州ヒューストンにあるライス大学の生物学者で研究リーダーを務めたデブラ・ブロック氏は概説する。バクテリアが不足するのはおそらく、バクテリア自身が飢えているためだ。

「約10万のアメーバからなるナメクジ状の集合体を形成する。その後、成熟するとキノコのような子実体を作る」。子実体は茎のような枝を伸ばし、先には胞子塊を持つ。アメーバの集合体を引きずりながら、胞子を空中に放つ。そこには“種”として少量のバクテリアが含まれている。

 つまり、キイロタマホコリカビは食料を食べ尽くしてから次の場所に移るのではなく、少量を“殻”に入れて旅立つことがわかった。

 胞子が地面に落ちると、再びアメーバ状になりバクテリアの種をまく。まるで人間が不毛の地から肥沃な農地に移るように、アメーバもより良い場所を求めているのだ。ブロック氏は、「好みのバクテリアを運ぶため、新しい土地で繁栄できる」と話す。

 キイロタマホコリカビはバクテリアを世話している気配がなく、いわば受動的な栽培だとブロック氏は指摘する。これに対し、アリやシロアリなどの社会性昆虫は菌類を育てたり、ほかの昆虫の“乳搾り”をしたりして、甘い食べ物を得ることが知られている。受動的とはいえ、単細胞生物がこのような栽培をするのは前代未聞だった。

 ブロック氏のチームは以来、原始的な移動性の“農業”を営むアメーバを複数見つけた。いずれも、栽培行動をするほかの生物と共通の特徴があり、人間とも似ているという。「社会性があるからこそ、このようなことができるのだろう。単独で行動するアメーバは子実体を形成しないため、キイロタマホコリカビのように移動しない」とブロック氏は述べている。

 この研究結果は1月19日、「Nature」誌オンライン版で発表された。

Photograph courtesy Owen Gilbert

文=Mason Inman

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