月で銀を発見、水の起源を示す?

2010.10.21
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NASAの月探査機ルナー・リコナイサンス・オービタ(LRO)が撮影した月面クレーター「カベウス(Cabeus)」。

Image courtesy NASA
 最新の研究によると、昨年10月にNASAの探査機が衝突した月面クレーターには、銀や水銀が予想外の濃度で存在しているという。「銀色の月」のたとえは、どうやら本当だったらしい。 かつてアポロ宇宙飛行士が持ち帰った月の石からも銀や水銀は検出されているが、ごく微量であった。ところが、NASAの観測機エルクロス(LCROSS:Lunar Crater Observation and Sensing Satellite)のロケットを月の南極付近にあるクレーター「カベウス(Cabeus)」内に衝突させ、噴き上がったちりを回収・分析したところ、はるかに多量の銀と水銀が含まれていることが明らかになった。

 この驚くべき発見は、「月の水がどこから来たのか、なぜ極地に集中しているのか」といった疑問の解明にもつながる可能性があるという。

 月に天体が衝突すると、銀や水銀など容易に気化する金属は、低温の極地に原子単位で移動する傾向がある。冬に室内の水蒸気が窓辺で結露するのと同じ原理だ。水などの揮発性化合物が小惑星や彗星によって持ち込まれた場合、同じようにこの“冷却沈降”効果が働く。

 研究チームのリーダーで、アメリカ、ロードアイランド州にあるブラウン大学のピーター・シュルツ氏は次のように話す。「銀は一種のトレーサー(追跡子)のようなものだ。月の水がどこから来た可能性があるのかを教えてくれる。分析によれば、おそらく月に衝突した彗星や小惑星が起源のようだ」。

 エルクロスのミッションでNASAは、月の南極付近にある永久影に覆われたクレーターに、セントールロケットを衝突させた。衝突前に切り離された観測機エルクロスは、全容を記録に収めた後、自らも月に衝突した。

 セントールの衝突だけでも、カベウスクレーター内部に直径30メートルの新たなクレーターが生まれている。そしてこの衝撃により、月面のちりや気体、さまざまな破片が最大6000キログラム、宇宙空間に向けて飛び散っていった。

 エルクロスミッションの主任研究員アンソニー・コラプリート氏がこの噴出物を解析したところ、衝突時におよそ155キロの水蒸気と氷が放出されていたと判明した。また、クレーター内に少なくとも全体の5~8%の氷が残っていると推定している。

 一方、シュルツ氏の研究チームは、銀と水銀の存在量を測定した。そして、軽質炭化水素や硫黄含有分子、二酸化炭素など、衝突時の噴煙に含まれていた揮発性化合物の検出も行った。「揮発性化合物の研究が進み、月での分布状況が判明すれば、太陽系の歴史に関して新たな情報が得られるだろう」とシュルツ氏は話す。

「地球では昔の大気の研究や、過去に発生した気候変動の痕跡の調査で、南極大陸の氷が役立つ。月の氷にも同じように手掛かりが隠されていると考えられる。いずれは太陽系の気候史にもつながるかもしれない」。

 シュルツ氏によると、月への植民が進み、宇宙旅行の中継地点として月面基地を利用する時代が近づけば、そうした太陽系の気候が重要になってくるという。「全体像をとらえなければならない。利用を始める前に、月の環境保全と調査のあり方を考える必要がある」。

 今回の研究成果は、10月22日発行の「Science」誌に掲載されている。

Image courtesy NASA

文=Ker Than

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