NASAの探査機、太陽へ突入の計画

2010.09.13
太陽に接近するソーラー・プローブ・プラス(想像図)。

Image courtesy JHU/APL
 2009年に水氷の存在調査で月を“爆撃”したNASAが、次の標的は太陽だと発表した。史上初の近接観測が目的だという。突入する探査機は、乗用車サイズの「ソーラー・プローブ・プラス」。9月2日、ミッションで実施する科学実験の最終選考が、責任者らによって行われた。 2018年までに打ち上げ予定のソーラー・プローブ・プラスは、超高温の外層大気「コロナ」へ突入を繰り返し、燃え盛る太陽表面から650万キロ前後まで接近するという。

 テキサス州にあるサウスウェスト研究所の職員で、ミッションの主任研究員を務めるデイビッド・マコーマス氏はこう話す。「これほど大胆で危険な観測はめったにない。太陽の支配力は絶大で、太陽風で運ばれた荷電粒子の流れが作る宇宙天気は地球もその影響下にある。オーロラの出現から電力網の機能不全、人工衛星の故障まで、一切合切全てと言って良い」。

 ソーラー・プローブ・プラスは約7年後のミッション終了まで、金星でスイングバイしながら太陽を周回し、最大24回コロナに突入する予定だ。探査機は、打ち上げから2カ月後に2400万キロの距離で最初の接近通過を行う。その後は金星スイングバイを重ねて徐々に軌道を修正し、周回ごとに少しずつ太陽へ接近していく。2024年、その距離は水星の公転軌道の8分の1までに縮まるという。

 接近した探査機は相当な高温にさらされるため、NASAは最先端の炭素複合材料を使用する耐熱材を装備した。「大気圏再突入時のスペースシャトルは、機体下面に耐熱材のセラミックタイルを貼っている。似た素材を大量に使っていると考えて良い」とマコーマス氏は解説する。

 ソーラー・プローブ・プラスの耐熱材は、摂氏1400度を超える高温と強烈な太陽放射に耐えなければならない。「予定の最短距離にまで近づくと、耐熱材が受ける熱は地球の周回軌道上の500倍を超える。過酷な環境から保護しなければ、搭載した観測機器は機能停止してしまうだろう」とマコーマス氏は語る。

 このミッションが成功すれば、地球から最も近い恒星「太陽」にまつわる数々の謎が解き明かされるはずだ。「ソーラー・プローブ・プラスのミッションで、太陽と地球周辺の宇宙空間を結び付ける最も基本的なプロセスが解明される」と、宇宙科学・工学を専門とするミシガン大学のトーマス・ザーブチェン(Thomas Zurbuchen)教授は話す。

 同氏は、NASAが打ち上げた最新の太陽観測衛星ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(SDO)のプロジェクト担当科学者である。SDOは、地球の上空約3万6000キロの軌道から太陽を観測している。「活発に活動する太陽はさまざまな変化を見せるが、地球周辺の宇宙空間も同じように変化しており、われわれの生活にも多くの影響がある。今度のミッションが成功すれば、いままで不明だったその“繋がり”が明らかになるだろう」と同氏は説明する。

 未解明の謎は他にもある。太陽の内層大気である「光球」は平均6000度しかないのに、外層大気「コロナ」の温度が100万度を軽く超えることがわかっている。コロナ中の荷電粒子が加速して太陽風が生じるプロセスも不明だ。「距離を置いた観測はさまざま行われてきたが、近接観測は例がない。コロナに突入するソーラー・プローブ・プラスは、データを直に計測する初めての探査機になる」と、サウスウェスト研究所のマコーマス氏は期待を述べた。

Image courtesy JHU/APL

文=Andrew Fazekas