密林のネコ、サルの声をまねて狩り

2010.07.14
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小型のネコ科動物マーゲイがサルの声まねを使って狩りをするという研究が発表された(資料写真)。

Photograph by J.H. Pete Carmichael, Riser/Getty Images
 大胆で小さな森のネコにとって、生き残る鍵は“サルまね”なのかもしれない。ニューヨークを拠点に活動する非営利団体の野生生物保護協会(WCS)は2010年7月8日、ネコ科の小型肉食動物マーゲイ(別名:ツリーオセロット)がサルの鳴き声をまねて獲物をおびき寄せるとの研究結果を発表した。 ブラジル、マナウス近郊のアマゾン熱帯雨林にあるアドルフォ・ドゥッケ森林保護区で2005年に行われた調査で、オマキザル科の一種フタイロタマリンの赤ちゃんの声をマーゲイがまねしているのが見つかった。

 WCSの研究員で研究に参加したファビオ・ロヘ氏は電子メールでの取材に対し、アメリカ大陸に生息するネコ科動物が獲物の声をまねた事例が論文として発表されたのはこれが初めてで、今のところほかに例がないと話す。世界のほかの場所でも狩りの道具として声まねを使う捕食動物は思いつかないという。

 ロヘ氏によると、マーゲイの甲高い鳴き声はサルの赤ちゃんのまねとしては「けして上手ではなかった」が、近くで餌を食べている複数の大人のフタイロタマリンがその声に興味を引かれて寄ってきたという。しかし、ゆっくりと近づいたフタイロタマリンはマーゲイを見つけ、マーゲイが攻撃を仕掛ける前にみな逃げてしまった。

 近い将来深刻な絶滅の危機に瀕する可能性が高い準絶滅危惧種として国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに登録されているマーゲイはネコ科の哺乳類で、まだら模様の体毛を持ち、体重3キロあまりまで成長する。通常は小型の哺乳類、鳥類、爬虫類を餌とする。

 IUCNによると、マーゲイの生存を脅かしているのは、生息地の破壊のほか、毛皮またはペットとしての取引、さらには家畜を襲われた農場経営者による射殺などもあるという。

 調査時に観察されたマーゲイは狩りに失敗したが、マーゲイが餌を捕えるために驚くべき“心理作戦”を使うことがこの観察からわかるとロへ氏は指摘する。

 また、このジャングルで“卑怯な”手を使うネコはマーゲイだけではないかもしれない。ロヘ氏の研究チームがアマゾン中央部に住む人々に聞き取り調査を行ったところ、ピューマやジャガーといったほかのネコ科の動物が獲物を騙そうと鳴きまねする声を聞いたという証言が得られた。

 鳥類のオバシギダチョウや齧歯類のアグーチなど、南アメリカ大陸の被捕食動物には非常に鋭い声で鳴くものが多いため、ネコ科の動物が「まねできる可能性はある」と研究チームは推測する。

 しかも、声をまねる技術は親譲りかもしれない。ロへ氏によると、マーゲイの母親はこの模倣戦略を自分の子に教えている可能性が高いという。「野生のネコ科動物の場合、母親からこうした戦略を学ぶことが生き残りにとって決定的に重要と思われる」。

 この研究は2009年6月発行の「Neotropical Primates」誌に掲載されている。

Photograph by J.H. Pete Carmichael, Riser/Getty Images

文=Christine Dell'Amore

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