落雷でキノコの収穫量が増加

2010.04.12
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人工の稲妻を照射した原木から生えるシイタケ。

Photograph courtesy Koichi Takaki
 日本では古くから落雷でキノコが豊作になるという言い伝えが信じられており、農家は農地への嵐の到来を歓迎してきた。そして現在、この伝承に科学的根拠を与える研究が進んでいる。日本食に欠かせない食材であるキノコは、実際に落雷によって数が増えるという。 現在、日本ではキノコの需要が高く、海外からの輸入量が増えている。主に中国や韓国から年間およそ5万トンのキノコが日本に輸出されている。

 岩手県では4年間に渡る研究の一環として、農業試験場に植えた様々なキノコに人工的に発生させた稲妻を照射し、キノコの数が実際に増えるかどうかを確認する実験が行われている。

 最新の実験の結果、稲妻と同等の強さの電気的刺激を与えると、ある種のキノコは従来の栽培法に比べて収穫量が2倍以上になることがわかった。

「今までに10種類のキノコで実験し、8種類で効果が確認された。最も効果が高かったのはシイタケとナメコで、食用ではないが東洋医学の一部で使われるレイシ(マンネンタケ)でも実験を行った」と、岩手大学工学部准教授の高木浩一氏は話す。

 高木氏の研究チームは、キノコの胞子を植えつけた原木に高電圧パルスを印加して、キノコの生長を刺激することを試みた。

 自然界の稲妻は電圧が10億ボルトに上ることがあり、落雷時はその電気が地面を伝わっていく。これほど大きなエネルギーが直撃すればキノコは焼けてしまうだろうが、落雷地点の近くにあるキノコが、土の中を通って弱くなった電荷を浴びることで生長が促される可能性は大いにある。そこで研究チームは、弱めの電気のバーストを使用して実験を行った。

 繰り返し実験を行った結果、1000万分の1秒間に5万~10万ボルトの電気を浴びせたときにキノコの生長が最も活発になることがわかった。このレベルの適度な電気を浴びたシイタケの収穫量は、電気を浴びていない原木からの収穫量の2倍になった。また、電気を浴びたナメコは収穫量が80%増加した。

「突然大きなエネルギーを浴びたキノコは、菌糸から分泌されるタンパク質と酵素の量がいったん減少するが、その後に急増するという反応を示す」と高木氏は説明する。

 菌糸はキノコにとって根のような働きをする細長い細胞で、胞子を下地に固定して栄養分を取り込む。また、菌糸は新しい子実体を作り出す。子実体とは傘を持った肉厚の組織で、胞子を生成するほか、作物として収穫される。

 菌糸が稲妻に対してこのような反応を示す理由はまだ研究中である。しかし、高木氏の研究チームと共同で研究を行う岩手生物工学研究センター主任研究員の坂本裕一氏は、危険に対する反応として繁殖力を増大させているのではないかと推測する。「キノコにとって、落雷は自分たちを簡単に全滅させる非常に深刻な脅威となる。キノコは死ぬ前に自分を再生しておかねばならないと感じ、稲妻を察知すると自動的に成長を加速させて子実体の数を増やすのだろう」。

 高木氏と坂本氏はこれまでの実験の成功を受けて、稲妻のような電気のバーストを発生させる装置を開発すれば農家の役に立つと考えている。ただし、その前に研究チームが取り組まねばならないのは、この技術をもっと使いやすくすることだ。「キノコの生長を促すために現在使用している設備は非常に専門的で複雑なため、設計を改良して扱いやすくしたい。キノコ栽培農家と協力しながら、最終的にこの技術を商品化したい」と高木氏は話す。

 高木氏の研究チームはダイコンでも同様の実験を始めている。初期の実験では、人工の稲妻を浴びせた方が早く発芽する傾向にあることが示されている。また、他の研究機関では、ナタネ、マメ、いくつかの品種のユリでも稲妻の実験が行われているという。

Photograph courtesy Koichi Takaki

文=Julian Ryall in Tokyo

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