中央アフリカのゴリラ、10年で絶滅?

2010.03.25
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コンゴ民主共和国のヴィルンガ国立公園でマウンテンゴリラを観察するレンジャー。

Photograph by Brent Stirton, National Geographic Stock
 アフリカ中央部のほとんどの地域でゴリラが間もなく絶滅する恐れがあるとする最新の報告書を国連が発表した。原因として、人間の人口の急増や類人猿の肉の売買、森林伐採や鉱山の採掘と並んでエボラ・ウイルスなどの感染症の広がりを挙げている。 大西洋岸からブルンジやルワンダなどアフリカ大陸中部の国々にまで広がるコンゴ盆地は中央アフリカの大部分を占め、昔からゴリラなどの類人猿が安住できる熱帯雨林となっている。しかし、国連がインターポール(国際刑事警察機構)と共同でまとめた今回の報告書によれば、「密猟の増加や生息地の減少に伴い、この地域に現存する生息地のほとんどで10~15年以内にゴリラが絶滅する可能性がある」という。

 8年前に行われた同様の調査では、コンゴ盆地のゴリラは2030年までに当時の生息地の90%を失うと予測された。今回の報告書は、この不吉な予測さえ今にしてみれば楽観的過ぎたようだとする。当時の調査では、中国における木材需要の増加やコンゴ民主共和国での鉱業の成長が予測できなかった。

 ゴリラの苦境をさらに深刻なものにしているのは、ゴリラの肉を食べるというこれまでタブー視されていた行為が行われるようになったことだ。鉱山の採掘や森林の伐採のための作業キャンプでプロの密猟者を雇い、“ブッシュミート”(野生動物の肉)を労働者や近隣諸国の紛争から逃れてきた難民に与えることが増えている。

 ブッシュミート取引でゴリラの肉が占める割合は今のところ小さいが、その影響は壊滅的なものとなる可能性がある。その理由は、ゴリラの個体数が既に大幅に減少しているからだけでなく、ゴリラのコミュニティーの結束が固いからだ。今回の報告書作成の責任者である国連環境計画(UNEP)のクリスチャン・ネルマン氏は、「1頭のゴリラを殺すことは、人間の家族の中の1人を殺すことに匹敵する。また、彼らの行動パターンや餌場を乱すことにもなる」と指摘する。

 この被害に拍車をかけるのが感染症の拡大である。その多くは、かつて原生林だった場所に人間が流入したことで深刻化したと報告書は伝える。エボラ・ウイルスなど自然発生した病原体が「中央アフリカの類人猿の大幅な減少に大きく影響した可能性がある」が、さらに大腸菌など人間や家畜が媒介する胃腸病原体が、類人猿の免疫系や生殖能力を弱めている恐れもあるという。このような種間感染は必ずしも人間とゴリラの接触を必要とせず、水や土壌などを介して離れた場所にも飛び火する。

 ネルマン氏によれば、コンゴ盆地に生息するゴリラの種で最も生存が脅かされているのはヒガシローランドゴリラで、その大部分はコンゴ東部の北キブ州と南キブ州に生息しているという。

 この一帯は近年、コンゴ政府軍と反乱軍との間の戦闘が最も激しい地域の1つである。また、金やコルタンといった金属の採掘も増えている。コルタンは携帯電話などの電子機器に使われる鉱物である。

 一方で2009年には、それまで知られていなかった750頭のヒガシローランドゴリラの集団が発見されて期待が高まったが、全体数は1990年代半ばの約1万7000頭から現在の5000頭へと減少を続けている。

 ただし、今回の報告書は保護の成功例にも触れている。コンゴ東部のヴィルンガ国立公園に生息する代表的な動物であるマウンテンゴリラの数が回復しているのだ。

 ヴィルンガのマウンテンゴリラの数は1950年代の約250頭から現在は約380頭にまで増えている。これは、密猟者や木炭取引のための森林伐採者を取り締まるレンジャーパトロールが強化されたためだ。

 しかし、「成功例もあるが、それでゴリラに対する脅威が減ったわけではない」とヴィルンガ国立公園の責任者エマニュエル・ド・メロード氏は警告する。「われわれは今、たった1つの場所に非常に少数の個体が生息するという異常事態に直面している。まるで、卵を全部1つのカゴに入れているような状況だ。この数年間は成功例もあるとはいえ、こうした状況が彼らの生存を非常に危ういものにしている」。

Photograph by Brent Stirton, National Geographic Stock

文=Nick Wadhams in Nairobi, Kenya

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