カメラトラップ(自動撮影装置)で撮影されたマレーヤマネコ。マレーシアのタンクラップ森林保護区で2009年3月に撮影。

Photograph courtesy Wilting, Cord, Hearn, Hesse, and Mohamed (paper)
 東南アジアに生息する希少種マレーヤマネコは他に類を見ない独特なネコと言われる。水かきの付いた足と流線形の奇妙な頭部を持ち、泥炭湿地林で泳ぐことを好む。しかし、その珍しい水生の生態が絶滅の一因になるかもしれない。マレーヤマネコが住む低地の半分以上が、バイオ燃料の原料となる農作物を育てる広大な耕作地へと急速に姿を変えつつあるという最新の研究が発表された。 マレーヤマネコは最も研究が進んでいないネコ科動物のひとつで、体重は約1.5キロ、魚やカニを食べている可能性が高い。研究の共著者で、ドイツのベルリンにあるライプニッツ研究所・動物園野生生物研究センターのアンドレアス・ウィルティング氏によると、頭部が流線形なのは泳ぐスピードを上げるためかもしれないが、まったくの憶測に過ぎないという。

 めったに姿を見られないマレーヤマネコのおおまかな生息数を調べるために、ウィルティング氏の研究チームは1984年以降のマレーヤマネコの散発的な目撃記録を集めて繋ぎ合わせた。その結果は、タイ、マレーシア、ブルネイ、インドネシアの山間部の熱帯雨林に生息する夜行性のマレーヤマネコの繁殖個体数が2500匹未満だったとする国際自然保護連合の過去の試算と一致した。

 研究チームは次に、この生息数の試算結果を同時期の気候記録と組み合わせてコンピューターモデルを作成し、マレーヤマネコが過去にどこに住み、現在どこに住んでいる可能性が高いかを予測した。結果は、絶滅の危機に瀕するマレーヤマネコにとって最大の脅威を示すものだった。バイオ燃料の生産に使われるヤシ油の原料となるヤシを育てるためにこの地域の湿地の水が抜かれて耕地が拡大すると、マレーヤマネコの生息数も減少し続ける可能性があることがこの研究でわかった。

 ウィルティング氏によると、研究チームはこのモデルを利用してマレーヤマネコの絶滅を防ぐために保護が必要な19カ所の“ホットスポット”を特定できたという。

 この地域で保護体制が確立されたエリアは、そのほとんどが標高の高いところにあり、低地に生息する生物には安全地帯となっていない。驚くべきことにマレーヤマネコは高地の熱帯雨林で一度も目撃されていない。これはマレーヤマネコが湿地と河川で獲れる餌だけを食べることを示している。

 ウィルティング氏によると、研究チームはこのモデルと研究結果に基づく提案を東南アジア各国政府にすでに提示したという。「現場で対策がとれる人々の目に止まらなければ、学術誌に論文を発表しても意味がない」。

 研究チームはまた、この研究が端緒となって、東南アジアの生態系が脅かされていることの象徴としてこの地に住むマレーヤマネコが取り上げられるようになればと願っている。「ネコは非常にかわいらしい動物なので、これを旗印に、低地の森林のために行動を起こそうと訴えられればと思う」。

 この研究はオンラインジャーナル「PLoS ONE」に2010年3月17日に公開された。

Photograph courtesy Wilting, Cord, Hearn, Hesse, and Mohamed (paper)

文=Christine Dell'Amore