脳は高度な働きで性的魅力を判断

2010.02.15
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人が異性に一目で欲望を抱くのは単なる動物的本能ではないことが研究で示された。

Photograph by PBNJ Productions, Photolibrary
 今年のバレンタインデーも、魅力を感じる異性に意味ありげな視線を投げかける人は多かったことだろう。研究によると、こうした行動は人間の最も洗練された思考プロセスの一端を示している可能性があるという。 人間が自分にとって誰が魅力的なのかを判断するプロセスは、たとえ見た目だけでの判断であっても、本能的な反応とはいえない非常に複雑なプロセスであることが最近行われた脳スキャンによる研究でわかってきた。

 シラキュース大学の神経科学者ステファニー・オルティグ氏と、ジュネーブ大学精神医学センターのフランチェスコ・ビアンキデミケリ氏は、性的体験における脳の役割を長年にわたって研究している。

 両氏の最新の研究では、人間は他人の性的魅力をすばやく判断する際、脳の中で相手の意図を理解したり自己認識するといった高次な機能をつかさどる高次脳領域を使用していることを発見した。

 実際に高次脳領域は、視覚をつかさどる視覚野や感情をつかさどる感情中枢が情報を受けとる前に活発化しているようだとオルティグ氏は言う。

 これまでの学説では、脳はまず視覚で性的魅力に関する情報を受け取り、その情報が感情中枢を通って脳内を上り、最後に高次脳領域に達すると考えられていた。しかしオルティグ氏の研究によれば、まず高次脳領域が、どういう人が魅力的なのかを示す青写真的な情報を視覚野に伝えておき、さまざまな反応を感情中枢にあらかじめ用意している可能性があるという。「どのような相手にどのような場合に欲望を抱くのかを自分が意識する前に、既に脳は知っているということだ」。

 この研究でオルティグ氏とビアンキデミケル氏は、脳スキャン装置を使用し、高密度EEGニューロイメージングと呼ばれる方法で、ボランティアで参加した13人の健康な成人の脳の活動を記録した。

 実験では、まず被験者に水着を着た人の写真を次々と見せて、魅力的と思うかどうか判断させた。

 その結果、ほとんどの被験者は0.5秒もかからずに判断を下したが、これほど短い時間の間に高次脳領域を含む脳の複数の異なる領域で電気的活動が確認できたという。そして、欲望に関わる活動で最も活発になった領域の1つは、自己認識と自己イメージの形成に密接に関連する領域だったことがわかった。「基本的に、自己イメージが確立していない人は、性的欲望にも混乱がみられる」とオルティグ氏は説明する。

 また、魅力的と思わない人を除外するときより、魅力的と思う人を発見するときのほうが少し時間がかかっていた。この発見の重要性を指摘するのは、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の進化心理学者ドナルド・シモンズ氏だ。

「ある人が刺激的な画像を非常に魅力的だと感じるためには、画像の中のアピールポイントすべてが、その人の欲望の対象の範囲に入っていなければならない」とシモンズ氏は語る。同氏は今回の研究には参加していない。

 太っているとかニキビが多いなど、自分にとって魅力的でないと思える部分が1つあるだけで、人は相手を魅力がないと簡単に判断してしまうと同氏は説明する。「つまりたいていの場合、魅力的でない部分を見つけることは他者を認識するうえで問題となりやすく、また大きな長所よりも短所のほうが先に見つかるものだ」。

 最終的には、オルティグ氏とビアンキデミケリ氏の研究により、人間が今のような形で他者に欲望を感じるように進化した理由について、新たな見方が生まれるだろう。

 つまり、現在の脳の神経経路は、古代人が配偶者候補の価値についての情報を身体的特徴から集めていた結果として形成された可能性があるということだ。例えば、スキンケア製品が登場するまでは、人間の年齢や重大な健康問題を知るよい手がかりは肌の状態だったのだろう。

「したがって、配偶者評価のための信頼できる情報を見つけて利用するための心理メカニズムが、自然淘汰の過程で形成されたのだと私たちは考えている」とシモンズ氏は述べた。

 オルティグ氏によれば、今後の研究では写真を使うのではなく、人間のカップルを脳スキャン装置につないで互いの脳の活動を記録したいと考えているという。そうすれば、欲望の変化を“ありのままに”見ることができるからだ。

Photograph by PBNJ Productions, Photolibrary

文=Brian Handwerk

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