2500年前のギリシャ船 シチリア沿岸から引き揚げられる

2008.08.11
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2008年7月28日、イタリアのシチリアで2500年前のギリシャの沈没船が回収された。

 回収された船は、船長が21メートル、船幅が6.5メートルあり、ホメロスの『イリアス』で初めて描かれた技法で建造されている。『イリアス』は、この船よりも数世紀前に著されたと考えられているギリシャ最古の叙事詩である。

 沈没船はイギリスのポーツマスに送られる予定で、修復作業の後、シチリア島のジェーラに戻されるという。シチリア州の当局関係者は、建築予定の新しい海洋博物館に修復した船を展示できる日を心待ちにしている。

Photograph from EPA/HO
 7月28日、古代ギリシャの船がイタリアのシチリア島南部の海岸から引き揚げられた。作業を行った考古学者チームによると、いままで発見された古代ギリシャ船の中では最大で、保存状態も最も良いという。 回収された船は2500年前のもので、船長が21メートル、船幅が6.5メートルあり、ホメロスの『イリアス』で描かれた技法で建造されている。『イリアス』は、この船よりも数世紀前に著されたと考えられているギリシャ最古の叙事詩である。この技法では、最初に船の外殻が造られ、後から内枠が加えられている。船殻を構成する木製の厚板は縄でつながれており、松ヤニなどの樹脂により防水処理がほどこされている。

 ベネチアにあるカ・フォスカリ大学(ベネチア大学)の海洋考古学教授、カルロ・ベルトラメ氏は「ジェーラ沖近海で発見されたこの船は、地中海における最も重要な発見と言ってもよいだろう。縄で船殻を束ねるギリシャ船は、これまでにもイタリアやフランス、スペイン、トルコで発見されている。一番最近発見されたジェーラの沈没船は、最も保存状態が良い」と話す。

 先月、考古学者チームは、イタリア沿岸警備隊の協力を得て沈没船を海面に引き揚げた。引き揚げ作業を指揮したシチリア州文化遺産担当部門代表のロザルバ・パンヴィーニ氏は、「この船は商用の帆船で、おそらく海岸沿いの短い距離を航行するのに使用したのだろう。頻繁に陸地に立ち寄り、荷の積み降ろしを行ったはずだ」と話す。「船はアテナイに寄港した後、ペロポネソス半島を経由した。ギリシャの西岸を北上し、オトラント海峡を渡る。そして、イタリアの沿岸を航行し、シチリアに向かったのだ」という。

 船は、当時ギリシャの植民地であったジェーラを目指した。海岸からおよそ800メートルのところで、おそらく嵐に襲われて転覆した。それから2500年の間、海底の泥の中で静かに横たわっていた。そして、1988年、2人のスキューバダイバーが沈没船を発見し、シチリア州の文化遺産担当部門に連絡したのだ。

 船全体の回収は発見から20年かけて行われた。沈没船はイギリスのポーツマスに送られる予定で、修復作業の後、再びジェーラに戻されるという。シチリア州の当局関係者は、建築予定の新しい海洋博物館に修復した船を展示できる日を心待ちにしている。

 ベルトラメ氏は「この船は、古代ギリシャ船の中でも初期型に属し、造船技術の進化過程におけるミッシングリンクを埋めるものだ。縄を使った縫い合わせ技術とほぞ穴を使った接ぎ合わせ技術を組み合わせて利用している。これは独特な技法で、後に造船技術として広く普及するものだ」と語る。地中海地域には同様の技法を用いていた場所がいくつもあり、今回の沈没船引き揚げにより地中海の歴史に新たな一面が加わるかもしれない。

 イタリア中央修復研究所のロベルト・ペトリアッジ氏は、「この地域で縫い合わせ方式で船を作っていたのはギリシャ人だけではなかった。技術知識は地中海地域に容易に広がっただろう。今回の発見は、エジプト人やフェニキア人も同じ方式を使っていたことを証明するものだ」と語っている。

Photograph from EPA/HO

文=Maria Cristina Valsecchi in Rome

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