経済大国としての役割を担うドイツのベルリンと、ユーロ危機で巨額の金融支援を受けたギリシャのアテネ。欧州の対極に位置する二つの首都を歩く。

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ベルリンとアテネ 二つの欧州

経済大国としての役割を担うドイツのベルリンと、ユーロ危機で巨額の金融支援を受けたギリシャのアテネ。欧州の対極に位置する二つの首都を歩く。

文=アダム・ニコルソン
写真=ゲアード・ルドウィッグ、アレックス・マヨーリ

 灰色の空に閉ざされた北の内陸都市ベルリン。エーゲ海に面し、街路の並木にオレンジが実る南の都市アテネ。

 しかし、実際に訪れた人が目にするのは、こうしたイメージとはまた別の表情だ。ゲルマン民族の都市ベルリンは、東西ドイツ統合後の自由の息吹に包まれ、活気にあふれている。欧州で最も開かれた魅力的な都市に生まれ変わり、成功に伴う悩み以外にこれといった問題もなさそうだ。
 一方、古代ギリシャの中心地だったアテネは、エーゲ海のまばゆい光とは裏腹に、ここ数年の深刻な財政危機から今も脱出できず、未来は依然として不透明なままだ。

EU加盟とユーロ危機、ギリシャが見た「天国と地獄」

 今の欧州の対極にあるかのようなこの二つの都市は、いや応なしに共通の目的に向かって二人三脚で歩む運命にある。ヒトラーのユダヤ人大虐殺と第二次世界大戦という悪夢の歴史を経験した欧州諸国は、戦後、「一つの欧州」という壮大な構想を掲げて、統合と拡大のプロセスを進めてきた。今では欧州連合(EU)の加盟国は28カ国、うち19カ国が単一通貨ユーロを導入している。

 財政危機が最も深刻だった2009~11年に首相の報道官を務めたヴァシリス・パパディミトリウによると、ギリシャにとって1981年のEU加盟(当時は欧州共同体)は「港にやって来た助け舟のよう」だったという。北は共産圏の国々と国境を接し、エーゲ海を挟んで東のトルコとは軍備拡大競争を強いられ、救いがたく貧しかったギリシャは「このとき初めて、れっきとした欧州の一員として扱われた気がした」のだと、彼は話す。

 EU加盟でアテネは楽観ムードに包まれ、補助金のおかげで長期にわたって成長を謳歌できた。2004年に五輪を開催し、その後、壮麗な新アクロポリス博物館を完成させ、ギリシャは現代的で洗練された姿を世界に見せた。

 その後に起きたユーロ危機で「誰もが罪悪感を抱きました」と話すのは、アテネ郊外のさびれた工業地区で前衛的な劇団を率いる演出家のエリ・パパコンスタンティヌだ。「こうなったのも、自業自得だという意識です」。彼女によれば、ギリシャの人々は深刻な自信喪失に陥った。「ギリシャ人が内心最も恐れていたこと、つまり自分たちは欧州の一員にふさわしくないということを思い知らされたのです」

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年3月号でどうぞ。

編集者から

 ギリシャ情勢は刻々と変化していますが、筆者アダム・ニコルソンは、変わらない本質的な部分に目を向けて取材しています。「問題は、欧州全域にわたる経済活動と住民同士の結びつきをどう調和させるかだ」という言葉が印象に残りました。金融危機後にギリシャとドイツで何が起きたかをおさらいしたい読者にも、この特集はお勧めです。(編集T.F)

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