海底火山の噴火、きっかけは潮の干満

中央海嶺の火山活動は、海水位にきわめて敏感であることがわかった

2015.02.12
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溶岩や灰を巻き上げながら噴火する太平洋の海底火山(PHOTOGRAPH BY NOAA, NSF)

 太平洋や大西洋といった大洋の海底には、中央海嶺と呼ばれる海底山脈があり、その火山活動によって、海洋地殻が形成されている。先週『Geophysical Research Letters』誌に受理された論文によると、その海底火山の活動が、潮の満ち引きに対して驚くほど敏感であることがわかった。さらに、氷河期(氷期)との関係も示唆された。

海底火山と潮汐、氷期の関係

 コロンビア大学ラモント・ドハティ地球観測所の海洋地球物理学者、マヤ・トルストイは、海底火山の噴火10回分の地震記録を調査、それらの噴火が2週間おきに訪れる「小潮」(こしお)近くに発生している傾向を見出した。小潮時には、火山の上の海面が、他の時期よりもわずかに低くなる。海水の重みが減って小さな地震が誘発され、それが噴火のきっかけになっている可能性がある。

 さらに、10回の噴火すべてが、1月から6月までに発生していた。地球の公転軌道はごくわずかに楕円形をしており、その時期の地球は太陽から遠ざかる方向に移動している。そのため太陽による地殻への引力が減少し、やはり噴火が起こりやすくなると考えられる。

 これらの観測結果を見たトルストイは、潮汐よりずっとゆっくりながら、もっと大きく海水位が変化した事象として、氷期と海底火山の関係に目を付けた。

 氷期には、大量の氷河が大陸を覆っていた。氷河を形成する水の由来は海水であるため、当時の海面は現在より数百フィート(100フィート=30.5m)ほど低かった。その後、地球が温かくなり、氷河が解け出して海面が上昇した。

 過去200万~300万年の間、大陸の氷河や氷床は、約10万年周期で増減を繰り返してきた。地球の公転軌道が、10万年周期で伸び縮みしているためである。

 トルストイは、太平洋の海底地図にも、同じ10万年周期の証拠を発見した。海水位が低い時期に、東太平洋海膨に、溶岩による大きな丘が形成されていたことがわかったのだ。これは、海嶺にかかる水圧が減少した際に、噴火が増えたためであるとトルストイは説明する。

 彼女の説が正しければ、地球の気候に影響を及ぼしている楕円軌道のサイクル(木星と土星の重力によるもの)が、深海底火山の噴火頻度に影響を及ぼしていることになる。

海底火山が氷期にピリオドを打つ?

 海底火山の噴火は、氷期のサイクルによる影響を受けているだけでなく、逆に氷期のサイクルに影響を及ぼしている可能性があるとトルストイは考察する。

 10万年周期の公転軌道の変化は、季節による太陽光の分布を変える。しかし、今日の気候と最終氷期の気候の違いは、公転軌道の変化だけでは説明できない。最終氷期には、現在のボストンやシカゴも、厚さ1マイル(1.6km)もの氷河におおわれていたのだ。このサイクルが気候に与える影響は、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の変化によって増幅する。南極の氷床コアの調査から、CO2濃度も10万年周期に従うことがわかっているが、その変化の原因は明らかになっていない。

 海底火山の噴火は、海にCO2を供給し、その一部は大気中に放出される。トルストイによれば、これまでの研究では、その影響は小さいと考えられていたため、無視されていた。「それらの研究では、火山活動が一定のペースで発生していたことを前提としていました。量と同様に、頻度も重要なのです」

 トルストイの研究は、海底火山で発生したCO2が、海水位が低い氷期に爆発的に増えていることを示唆している。理論上、CO2の急増が十分に大きければ、その温室効果によって、氷期が急速に終焉を迎えることの理由が説明できる。

現代の地球温暖化の要因は人間

 ただし、今回の研究が、現代の地球温暖化に対する考え方に影響を及ぼすものではないと、コロラド大学ボルダー校の古気候学者、ジム・ホワイトは言う。

 理由は、地上および海底での噴火によって排出される温室効果ガスの量は、人間が化石燃料を燃やすことで排出している量に及ばないためである。ホワイトは言う。「炭素に関していえば、群を抜いて大きな影響力を持つ生き物は、私たち人間なのです」

文=Jane J. Lee/訳=堀込泰三

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