生きるために膨らむ動物たち

雌の気を引くため、身を守るため、動物たちは体を膨らませる

2015.02.06
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セイウチは眠くなると首のまわりを膨らませ、天然の枕を作る (Photograph by Paul Nicklen, National Geographic)

 先日、米プロフットボールNFLの試合で、ニューイングランド・ペイトリオッツが規定より空気が抜けた状態のボールを使用していたことが発覚し、注目を集めてしまった。だが自然界の動物は日々自在に空気を出し入れし、膨らんだり縮んだりして いる。それも、注目を集めるために。

 キジオライチョウはその一例だ。WWFの生態学者、ケヴィン・エリソン氏は、この大型の鳥が求愛行動の間、喉袋を膨らませているのを目にした。同氏によると、膨らませた喉袋はドラムのような役割をして、雄が雌を引きつけるために出す鈍い音を大きくするという。こうすると、 雄の出す音は最長で5キロ先まで届く。

「ここに雄がたくさんいますよ、と知らせているわけです」とエリソン氏は言う。大勢の歓声が上がっているのを聞いて、フットボールの試合を見ているのだなとわかるのに似ている。

 今回、NFLで発覚した規定外のボールは全部で11個。これにちなんで、膨らんだり縮んだりしている動物を11種紹介しよう。この動物たちがルールを破っているわけではないけれど。

ゾウアザラシ:ゾウアザラシの雄は競い合って鼻を膨らませて音を立て、雌に自分をアピールする。 30センチ近く鼻を伸ばす個体もある。

ホエザル:喉を膨らませ、動物界でも指折りの大きな鳴き声を出す。大きな鳴き声は雌を引きつけるほか、身を守り、ほかの個体とコミュニケーションを取るためにも重要だ。

パフアダー:毒ヘビで、危険を察知したときに体全体を膨らませる(パフ)ことから、パフアダーと呼ばれる。また、シューという音を発して捕食者を威嚇する。

セイウチ:眠くなると首のまわりを膨らませ、天然の枕を作る。膨らんだ二つの袋が浮き輪となり、 寝ている間、頭は水の上に出る。ほかの動物同様、セイウチの雄もこの袋を求愛に使う。

ナマカフクラガエル:体長5センチに満たない小さなカエルで、ほとんどの時間を地中に潜って過ごす。敵が来るのを察知すると体を膨らませ、かん高い声で鳴く。

アカメアマガエル:雄は肺の中の空気を使って、口の下の部分を広げ、緑色の皮膚がほぼ透明になるくらいに膨らませる。 中で空気が移動し、雌を呼ぶ大きな鳴き声になる 。

アメリカグンカンドリ:雄は1時間近くかけて喉袋を膨らませ、太鼓をたたくような求愛の声を大きくする。 赤い風船のように膨らんだ喉袋は、黒い羽毛と鮮やかな対照をなす。

ノガン:ノガンの雄も求愛行動として喉袋を膨らませる。そのほか、羽を広げる、逆立てる、尾羽を突き出す行動もみられる。

フグ:カワウソなどの敵に捕らえられると、フグは黄色の下腹部を膨らませて体を大きくし、食べられないようにする。フグの胆嚢には毒があるため、この自己防衛のメカニズムは捕食者を保護することにもなる。

オランウータン:首のまわりに約6リットルの水が入るほど大きく膨らむ袋を持つ。意外なことに、この袋は空気が入るときではなく、出ていくときに膨らむ。霊長類の音声行動についてまとめた「Primate Audition」によると、 膨張した袋は鳴き声を響かせるほか、木に登る、呼吸する、水に浮くなどの行為にも役立っていると考えられる。

文=Danielle Elliot/翻訳=キーツマン智香

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