最終話 惜別と感謝と、新たな地平

 アンの夜鳴きは一晩続いた。

 なんとなく寝不足の私は、ベッドから這い出すと、すでに犬たちに朝食をやりに行っていたトーニャが戻ってきて言った。

「アンったら、よほど夜鳴きで疲れたのね。朝食食べたら、寝てしまったわ」

 なんとまあ、まるで赤ちゃんそのものだ。

 私たちの朝食は、「パンケーキは、男の仕事だよ」と言うトムさんが作ってくれた。

 生クリームを乗せ、ブルーベリージャムをかけ、髭を蓄えた寡黙な男性が作る可愛らしいパンケーキを食べると、ペニーさんが、こんな話をしてくれた。

 あるとき彼女は、犬橇で出掛けたその帰りに、凍っていた川が割れて渡れずに帰れなくなってしまったことがあるのだという。

 家には幼い子供たちが待っていた。

 困り果てた彼女は、その時、パンダという名のリーダー犬を橇から放した。

 パンダならば、どうにか家に辿りついて、助けを求めてくれると考えたのだ。

 ところが、パンダは家の方向とは違う方向へ走り出してしまった。

 それを見たペニーさんは、途方に暮れてしまった。が、1時間ほどすると、パンダが戻ってきて、ペニーさんを誘導しはじめたのだという。

 別の方向に走っていったパンダは、迂回路を探して戻ってきたのだ。

 そんな賢いパンダに、ペニーさんやトムさんは、幾度となく困難を助けられたのだという。

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