かつて王族の狩り場だったイタリア北部のグラン・パラディーゾは、イタリアで最も古い国立公園。そこには今も、手つかずの自然が残されている。

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イタリア アルプス 極上の自然

かつて王族の狩り場だったイタリア北部のグラン・パラディーゾは、イタリアで最も古い国立公園。そこには今も、手つかずの自然が残されている。

文=ジェレミー・バーリン/写真=ステファノ・ウンターティナー

 グラン・パラディーゾは、1922年に指定されたイタリアで最も古い国立公園だ。
 西アルプス山脈の北部に位置し、イタリア北西部のピエモンテ州からヴァッレ・ダオスタ自治州にかけて広がっている。面積は約7万ヘクタールで、隣接するフランスのヴァノワーズ国立公園と合わせると西ヨーロッパ有数の自然保護区に数えられる。

 標高4061メートルのグラン・パラディーゾ山がそびえるこの国立公園は現在、高地に生息する野生生物の保護や学術調査といった活動の拠点となっている。グラン・パラディーゾにおける自然保護の歴史は19世紀にさかのぼるが、そのきっかけとなったのは山中にすむ野生のヤギ、アイベックスの存在だった。

国王の「お狩り場」がイタリアで最初の国立公園に

 16世紀から19世紀にかけて、肉や角を目当てにアイベックスの狩猟が行われた。その血には強壮作用があると信じられ、骨は魔よけのお守りにされた。乱獲の結果、1821年の時点でアイベックスの生息数はすでに50頭を下回っていた。
 保護策が講じられたが効果は上がらず、サヴォイア公ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世(のちのイタリア国王)は、1856年にこの土地を王領の保護地に定め、自分自身のためにアイベックスを守ることにした。狩りを好んだエマヌエーレ2世にとって、優美な姿のアイベックスはお気に入りの獲物だったのだ。

 孫のヴィットーリオ・エマヌエーレ3世がイタリア国王に即位した1900年には、アイベックスの生息数は約2000頭まで回復していた。だが欧州全域を巻き込む第一次世界大戦が始まると、新国王は狩りどころではなくなった。
 1920年、エマヌエーレ3世はこの王領を狩り場ではなく野生生物の保護区に定め、国に寄贈。2年後、一帯は国立公園に指定された。

 1993年には至るところでアイベックスの姿が見られた。当時、公園内には史上最高となる5000頭近いアイベックスが生息していたが、以後、生息数は減少し続けている。

 原因はわかっていないが、公園に勤務するドイツ生まれの生物学者、アハズ・フォン・ハルデンベルクは二つの仮説を考えている。一つは、出産する雌が高齢化して体の弱い子どもが生まれるため、生き延びる確率が低下しているという説。もう一つは、気候変動による植生の変化が影響しているという説だ。

 人工衛星のデータを分析して過去30年間に起きた植生の変化を調べれば、アイベックスが減った原因を突きとめられるかもしれないと、フォン・ハルデンベルクは考えている。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年2月号でどうぞ。

編集者から

 イタリアというと、まず思い浮かぶのは、ローマやベネチアなどの歴史ある街並み。でも、イタリアにも手つかずの自然はあるのです。年間約180万人の観光客が訪れるというグラン・パラディーゾは、米国の国立公園のような壮大さはないものの、ヨーロッパらしい情緒にあふれています。黄金色に染まった秋の木立や、夜の闇に咲く野の花など、四季折々の色鮮やかな風景も見ものですが、私のイチオシの一枚はオコジョ。真っ白でかわいい姿をぜひご覧ください。(編集M.N)

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