古代の黒焦げ巻物、著者は快楽を追う哲学者

紀元79年火山噴火の遺物、X線最新技術で解明へ

2015.01.22
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最新のX線技術で一部が解読されたパピルスの巻物。紀元79年の火山噴火でローマの都市ヘルクラネウムは壊滅し、炭化した巻物が残された。(Lexington Herald-Leader)

 紀元79年のベスビオ火山噴火の高熱で黒焦げになったパピルスの巻物が、X線技術の活用により、解読できる可能性が出てきた。

 この巻物は、古代ローマの都市ヘルクラネウム(現在のイタリア、エルコラーノ)で書かれたもの。20日に発表されたX線分析の結果によれば、これまで内容が分からなかった一部の巻物に関し、その秘密が明らかになるかもしれないという。

 ヘルクラネウムは、紀元79年のベスビオ火山噴火により、有名なポンペイの街とともに壊滅した。炭化した巻物およそ800巻が探検家によって発見されたのは260年前のことだ。通称「パピリの館」(Villa de Papyri)と呼ばれるその建物の書庫は、噴火によって15メートルを超す厚さの火山灰に埋もれていた。

 以後、多くの巻物が苦心して広げられたが、一部は作業中に壊れてしまい、大半はあまりにももろいために開かれないままになっていた。しかし、ナポリにあるイタリア学術研究会議(CNR)マイクロエレクトロニクス・マイクロシステムズ研究所のビト・モチェラ(Vito Mocella)氏らのチームによると、新たなX線技術で木炭インクと炭化したパピルスを区別することにより、巻物の状態のまま中の文字を読めるという。

 研究チームは科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表した論文で、「巻かれたままのパピルス文書だけでなく、まだ発見されずに眠っている文書に対しても新たな可能性を開く先駆的な研究だ」と報告した。

 今回使用されたX線技術は位相差断層撮影法といい、町を埋め尽くした火山灰により320℃もの高熱にさらされた巻物の断片から文字を読み取ることができる。解読された文字は、町が壊滅する前の100年ほどの間に書かれた可能性が高い。

「甘い生活」を唱えた哲学者

 新たな方法では、医療用CTスキャンのように、押しつぶされてゆがんだ炭化した巻物の3D画像を生成する。この方法は通常のX線と違い、炭化したパピルスの表面と木炭インクを識別できる。

 研究チームは巻物の内側を精査し、はるか昔にパピルスに記された厚さ数ミクロンの文字を読めたと発表した。初の試みで判読できたのは、24字の古代ギリシャ文字だった。古代ローマでも哲学を論じるのに使われていた文字だ。

 今回調査されたパピルスのうち研究チームが判読できた文字から、この巻物は他の多くの巻と同じく、哲学者フィロデモス(紀元前110ごろ~紀元前35ごろ)によって書かれた可能性が高いことが分かった。エピクロス派の思想家だったフィロデモスは、よき人生のために快楽の追求を奨励し、厳格な生き方を目指したストア派の対極にあった。

 研究チームは分析に基づき、巻物の内容として最も可能性が高いのは、友人同士の誠実さを説いたフィロデモスの随筆「率直な批判について」(On Frank Criticism)としている。

 モチェラ氏らは、この方法により、ヘルクラネウムの炭化した巻物を損傷せずに調査が進められ、ひいては「パピリの館」のさらなる発掘が再び検討されることを期待している。研究者の間では長年、建物の奥深くに書庫がもう一つあり、埋まったままになっている可能性が考えられているからだ。

文=Dan Vergano/訳=高野夏美

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