世界最大の水上メガソーラー、日本で建設

5000世帯分の電力を供給、年間約8000トンの二酸化炭素排出を削減

2015.01.23
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陸地のスペースが限られている場所では、フロート式の太陽光発電施設が有効だ。(Photograph courtesy of Kyocera Corporation)

 クリーンエネルギーの開発に取り組む企業は今、湖や湿地、池、運河などの水面をソーラーパネルの設置場所に利用しようと試みている。すでに英国、オーストラリア、インド、イタリアをはじめとする数カ国が、水に浮かべるフロート式の太陽光発電システムの導入を発表している。

 日本でも、フロート式としては世界最大の出力となるメガソーラー発電所が、千葉県市原市の山倉ダムに建設される。約5万枚のソーラーパネルが湖面の18万平方メートルを覆い、5000世帯分近い電力を供給する。完成すると、年間約8000トンもの二酸化炭素が削減できると見込まれている。米国環境保護庁の推計によると、一般的な自動車は年間4.7トンの二酸化炭素を排出する。つまりこの発電所が削減する二酸化炭素は、1700台分の排出量に相当する。完成は2016年の予定だ。

 山倉ダムの発電事業は、京セラと東京センチュリーリースの共同事業だ。水上架台(ソーラーパネルを設置する浮体構造物)は、フランスのシエル・テール社のものを使用する。なぜ陸上ではなく水上にソーラーパネルを設置するのか。それは湖や貯水池に設置すれば、陸上の土地を農業や開発用に利用できるし、環境保全にもなるからだ。だが、いくつかの課題も浮かび上がっている。

いくつかの課題が浮上

 陸地や屋根の上とは異なり、フロート式の太陽光発電にはこれまでなかった課題がある。一つには、パネルや配線を含めたすべての部品に防水を施す必要がある。

 加えて、構造体の風化に伴う水の汚染が懸念される。事業者には、水質に関する規制の順守が求められる。「シエル・テールの浮体構造物を選んだ理由の一つは、100%リサイクル可能な、紫外線や腐食に耐える高密度ポリエチレンを使っているからです」と京セラ ソーラーエネルギーマーケティング部長の池田一郎氏は話す。

メガソーラー発電所の建設が予定されている千葉県市原市の山倉ダム。(Photograph courtesy of Kyocera)

 台風や地震、地滑り、高波が頻繁に起こる日本では、自然災害も無視できない。そこでシエル・テールの研究開発チームは、フランス国立航空宇宙研究所(ONERA)による風洞試験を導入し、「ハイドレリオ」と呼ぶシステムを開発した。ソーラーパネルを設置するための高密度ポリエチレン製のフレームは、最大で風速約53メートルの風に耐えられる。

日本には適している

 過酷な気象条件にもかかわらず、なぜ日本でフロート式ソーラーパネルを設置するのだろう。それは日本での導入はポスター・チャイルド、つまり他の国に対する格好の宣伝になるからである。

 国土の75%を山地が占める日本列島では、大規模な太陽光発電所を建設できる土地は限られている。すでに過去数年間で陸上型の太陽光発電施設が急増し、利用できる土地が少なくなってきたと京セラの池田氏は指摘する。

 一方で米の生産が盛んなこともあり、灌漑用や洪水調整用の貯水池ならたくさんある。それらを利用して、水上に太陽光発電施設を設置できないかと検討する企業が増えているのだ。フロート式の太陽光発電システムの登場で、これまで使えなかった場所が有効利用できるようになった。

 頻発する地震も懸念材料ではないとシエル・テールでは考えている。「フロート式の太陽光発電システムは、基礎や安定性を確保するための設備をもたないため、地震の影響を受けにくいのです」と、シエル・テール 国際ビジネスマネージャーのエバ・パウリ―は説明する。「日本のような国には好都合です」

 ソーラーパネルの製造業者は、彼らの製品が問題の多いエネルギー資源に取って代わることを期待している。「原子力発電所の運転停止に伴い、天然ガスの輸入に大きく依存するようになった日本は、より海外依存度の少ないエネルギー資源が必要なはずです」とパウリー氏は言う。

生態系への影響

 前途有望な技術ではあるが、水中の生物に影響を及ぼす可能性は否定できない。構造体は太陽光を遮るため暗くなり、水温は徐々に低下する。その結果、藻類の成長が止まるかもしれない。シエル・テールでプロジェクトマネージャーを務めるリーズ・メスナジェは「良きにせよ悪しきにせよ、何らかの影響は出るでしょう」という。藻類がはびこる場所では、フロート式のソーラーパネルが藻類の繁殖を抑えて生態系に良い影響を与えるかもしれない。逆に絶滅危惧種が生息する場所では、それが有害になる。「発電所の管理者が水中にすむ生物を十分に把握しておくことは非常に重要です」とメスナジェは話す。

 企業には、地元の環境規制の順守が義務づけられる。太陽光発電システムは、動植物が豊かな岸から離れた場所への設置が求められるだろう。また、自然の湖よりも、生物多様性を損なう可能性の少ない人口貯水池のほうが、設置場所としては適しているかもしれない。

将来的は海上にも?

 代替エネルギーを事業とする企業にとって、地表の4分の3以上を占める海は、水上発電所を設置するのに格好の場所である。もっとも、海にソーラーパネルを浮かべるのはまだ先の話だ。京セラの池田氏によると、波や潮位の変化が運転を中断させるといった、新たな問題も浮上するはずだからだ。

 シエル・テールは海水でも使えるシステムを、現在タイで実験している。だが、設置に莫大な費用がかかる上、電力の生産地と消費地が離れていると効率が悪いという理由から、海上での発電は実用的ではないとの見方もある。

 今のところ、限られたスペースを有効に使い、陸上型よりも安価で高効率だと考えられる場所で、水上設置型の発電施設が建設されている。シエル・テールによると、同社のフレームはソーラーパネルの温度を低く保つことができるため、一般的な陸上型の発電システムに比べ最大で20%多く発電できるという。

 山倉ダムの発電事業は世界最大の水上設置型発電施設ではあるが、世界初ではない。そして最後にもならないだろう。

文=Bryan Lufkin/訳=益永依子

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