ウミガメが生まれ故郷に戻れる理由

地磁気の変化に応じて、営巣地も微妙に変化することが明らかに

2015.01.20
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リトルセントサイモンズ島(米国ジョージア州)で海をめざして進むアカウミガメの子ガメ。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL MELFORD, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 ウミガメは、世界各地の浜で孵化した後、何年間も広大な海を回遊する。それから自分の生まれ故郷に戻ってきて交尾し、産卵する。

 長距離移動に正確な位置情報が必要なのは、人間もほかの動物も同じ。渡りや回遊をする動物の多くは、目に見えない地磁気を感じとって位置情報を得ている。ウミガメもこの方法で位置情報を感知していることは以前からわかっていたが、生まれ故郷の浜に正しく戻ってくる仕組みについてはよくわかっていなかった。

 最新の研究により、その答えが明らかになった。ウミガメはここでも地磁気を利用して故郷を見つけていたのだ。海岸線の各地点には固有の磁気特性があり、ウミガメはこれを刷り込みによって覚え、故郷に帰るための体内コンパスにするのだ。

 2015年1月15日に『カレント・バイオロジー』誌に発表された論文によると、地磁気が時間とともにゆっくりと変化するのに合わせて、ウミガメの営巣地も移動していくことが明らかになった。「なんの目印もない広大な海で故郷への道を見つけることができるのですから、非常におもしろい機構です」と、この論文を執筆した米ノースカロライナ大学のJ・ロジャー・ブラザーズは語る。 

ボランティアの営巣地調査が裏付け

 ブラザーズらが調査の対象にしたのはアカウミガメ。

 アカウミガメは肉食で、体重は110kg以上になる。分布範囲は広く、極寒の水域を除き、地球上のあらゆる海に生息している。米国で見られるウミガメのなかでは個体数が最も多く、毎年、数千人のボランティアがフロリダ州の砂浜を歩いてアカウミガメの営巣地の数を数えている。この活動が重要な研究データとなった。

 一方、研究者は、地磁気の強さやその他の特性の経時変化を観測して、フロリダ沿岸の地磁気の微妙な変化を追跡してきた。アカウミガメが本当に地磁気を利用して生まれ故郷の浜に戻ってくるなら、地磁気の変化により営巣地も移動するはずだ。

 ブラザーズらは、ボランティアが収集したウミガメの営巣地のデータと、公式の地磁気データを組み合わせて、それぞれの変数が時間とともにどのように変化するかを示す動的地図を作成した。できあがった地図は、彼らの仮説を裏づけていた。アカウミガメの営巣地は、地磁気の変化とともに移動していたのだ。

アカウミガメは地磁気を頼りに回遊する。写真の個体は中米ベリーズのホルチャン海洋保護区で撮影。(PHOTOGRAPH BY BRIAN J. SKERRY, NATIONAL GEOGRAPHIC)

新たな保護戦略へ

 「ほかの研究者が『なんで自分は思いつかなかったのだろう?』と悔しがるような、実に創造的な研究です」と、米国海洋大気庁(NOAA)の生物学者ネイサン・プットマンは言う。

 ウミガメの生息数は、海洋汚染や底引き網漁、あるいは営巣地周辺の開発などにより減少していて、現在は絶滅の危機に瀕している。今回の研究成果は、ウミガメの保護戦略にも影響を及ぼすだろうとブラザーズは言う。

 例えば、多くの環境保護活動家がアカウミガメの巣の周囲を金網で囲っているが、金網は金属でできているため、故郷をめざすウミガメの地磁気の探知能力に影響を及ぼすおそれがある。

文=Carrie Arnold/訳=三枝小夜子

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