第1回 恐竜化石は「歩いて探す」

 恐竜化石の発掘調査に参加するモンゴル人は、ニックネームをつけるのが好きだ。私もこれまで「ザラ」「ファルコンズ・アイ」「ウォークマン」の3つのニックネームをもらっている。

 「ザラ」はモンゴル語で、ハリネズミのこと。どうも、私が頭を洗った後、髪の毛が逆立った様が、ハリネズミに似ているらしい。自分ではわからないが、顔もそっち系なのだろうか・・・。

モンゴル、ゴビ砂漠で発見した恐竜化石とともに。髪は帽子で見えないが、顔はハリネズミ系なのだろうか?

 「ファルコンズ・アイ(ハヤブサの目)」は、私がよく化石を見つけることからつけられたニックネームだ。ただ、時によって、「イーグルズ・アイ(鷲の目)」や「ホークス・アイ(鷹の目)」と呼び名が変わったりするので、どの猛禽類かはあまり重要ではないようだ。

 自分で言うのも変だが、確かによく見つける方だと思う。その理由の1つに、身長の低さがあると私は考えている。国際調査になると欧米の研究者が参加するが、みんな背が高い。化石を発見するにはもちろん経験が必要だが、背の低い方が地面に目が近く、より多く化石を発見できる。
 もう1つ私が心がけているのは、「人と同じところを探さない、同じ場所を通らない」ということだ。砂漠や山の中を探すとき、人はどうしても楽な道を求め、同じようなところを歩く。そんなところには、宝(新しい化石)は落ちていない。人の歩いた形跡のないところ、つまり、歩きづらいところを敢えて歩き、化石を探す。キャンプから化石を探しに歩いていき、1日過ごした後、元来た道をたどって帰る人が多い。確かに楽だが、せっかくのチャンスを無駄にすることになる。どんなに疲れていても、敢えて違う道を歩くように心がけ、常に化石を探す。

 最後の「ウォークマン」は、ポータブルオーディオプレーヤーのことではない。私がよく歩くことから「歩く人」という意味でつけられた。どれだけの面積をカバーできたかで発見する化石の数が決まると思っているので、とにかく歩いて、広い表面積に目を通す。

 新しい化石産地に行ったときには、「必ずここに恐竜化石はある」と考える。そして「とにかく人が歩かないところを歩き、なるべく広い面積をカバーする。そうすれば見つかるのは当たり前」と信念を持つ。
 しばらく探して化石が見つからないと、たいていの人はあきらめモードに入ってしまう。しかし私は違う。むしろワクワクしてくる。そもそもそこに「恐竜化石がある」ことを前提にしているので、見つからなければ見つからないほど、まだ目を通していない残された土地に恐竜化石の埋もれている確率が、相対的に上がることになる。次の1歩で見つかるかもしれないと、ワクワクするのだ。