人類はいつ頃、どうやってアメリカ大陸に到達したのか。新たな発見や仮説、さらには遺伝子研究の成果から、従来の通説とは異なる姿が見えてきた。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

アメリカ大陸 最初の人類

人類はいつ頃、どうやってアメリカ大陸に到達したのか。新たな発見や仮説、さらには遺伝子研究の成果から、従来の通説とは異なる姿が見えてきた。

文=グレン・ホッジズ

 アメリカ大陸へ最初に進出したのは、いったいどんな人々だったのだろうか。

 古代アメリカ先住民の骨を見る限り、彼ら「最初のアメリカ人」はかなり荒っぽい人々だったらしい。男性の過半数は暴行による傷があり、頭部に骨折の痕があるものも多い。狩りや戦争による負傷というより、仲間同士の激しい争いが絶えなかったようだ。女性にはこうした傷はないが、骨格は男性に比べてはるかに小さく、栄養不良や、身近な男性から暴力を受けていた形跡がある。

 2007年にメキシコで発見された巨大な水中洞窟からは、1万3000~1万2000年前の人骨が見つかり、顔面の復元やDNAの解析が行われた。その顔は現代のアメリカ先住民とはあまり似ていないが、遺伝子からは共通の祖先をもつことが判明。さらに2014年には別の骨からゲノム情報が解読され、最初のアメリカ人はアジアにルーツをもつことが確認された。

チリの遺跡発見で覆された「通説」

 最初のアメリカ人に関する謎は、実は20世紀中にあらかた解明済みだと思われていた。米国ニューメキシコ州のクロービス近郊で1万3000年前の槍先が出土し、同様の石器が北米各地の数十カ所で次々に発見された。こうした証拠から、大型の獲物を追って移動する狩猟民がマンモスなどを追いながら、最終氷期には陸続きだったベーリング陸橋を渡ってアジアから北米大陸へ到達し、内陸に氷のないルートが開通した後に南下したと考えられたのだ。

 この通説を覆したのが、1997年に南米チリのモンテベルデ遺跡で発掘調査を行った考古学者のチームだった。米国バンダービルト大学のトム・ディルヘイは、同地で1万4000年以上前に人類が居住していた証拠を発見したと発表。北米にクロービス文化が現れるより1000年も前ということになる。

 だがそんな時期に、どうやってはるかチリまで到達できたのだろうか。一つの仮説は、海からのルートだ。
 米国カリフォルニア州のチャンネル諸島では、約1万2000年前、島の人々が海洋文化を発達させていたことを示す有力な証拠が見つかった。彼らの祖先はアジアを出発し、「ケルプ・ハイウェー」とでも言うべき海路を通って、おそらくベーリング陸橋での長い滞在を経て米大陸に来たのではないか。調査を進めるオレゴン大学のジョン・アーランドソンは、そう考えている。ケルプ・ハイウェーというのはコンブなどの海藻が密生し、魚や海生哺乳類が豊富な生態系が連なる海域のことだ。
「3万年前から2万5000年前の日本には、舟を操る海洋民がいたことがわかっています。そうした集団が環太平洋地域を北上し、米大陸に来たのかもしれないと考えるのは、理にかなった推論でしょう」

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年1月号でどうぞ。

編集者から

 最新の研究成果から、アメリカ大陸へ最初に進出した人類の素顔が見えてきました。そのルーツはアジアにあるだろう、とは長年言われてきましたが、DNAの解析からも、このことを裏づけるデータが得られたのです。
 彼らの移動ルートとして有力視されているのは、研究者たちがケルプ・ハイウェーと呼ぶ「海の道」。日本や周辺のアジアにいた海洋民が、小舟をあやつり、海藻の森がはぐくむ海の幸を食料にしながら未知の世界へ進出していった――そんな光景を思うと、心躍ります。(編集H.I)

この号の目次へ

最新号

定期購読

ナショジオクイズ

写真はドバイの街を世界で最も高いビル「ブルジュ・ハリファ」から見下ろしたものですが、ブルジュ・ハリファの高さに近い山は次のうちどれ?

  • 箱根山
  • 比叡山
  • 天保山

答えを見る

ナショジオとつながる

メールマガジン無料登録(週2回配信)

メルマガ登録の詳細はこちら

ナショナル ジオグラフィック日本版 バックナンバー