驚異的な学習能力をもち、生後1年間で劇的な成長を遂げる赤ちゃんの脳。その発達に必要なのは、愛情という名の“栄養”だ。

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愛が育てる赤ちゃんの脳

驚異的な学習能力をもち、生後1年間で劇的な成長を遂げる赤ちゃんの脳。その発達に必要なのは、愛情という名の“栄養”だ。

文=ユディジット・バタチャルジー/写真=リン・ジョンソン

 20年ほど前、米国カンザス大学の児童心理学者たちがある研究を行った。低所得層から高所得層までを含む42の家庭を対象に、親子の会話のやりとりを録音し、子どもが生後9カ月から3歳に成長するまで追跡調査したのだ。

 その結果、驚くべきことがわかった。両親が大学教育を受け専門職に就いているような裕福な家庭では、子どもは1時間当たり平均2153語の語りかけを耳にしていたのに対し、生活保護を受けている家庭では平均616語と大差があった。低所得家庭の親は、子どもにかける言葉も「だめ」「下りなさい」など短い命令調のものが多く、生活に余裕のある家庭では、ある程度長い会話が交わされることが多かった。低所得家庭の子どもは、いわば言語発達のための“栄養”が不十分だということだ。

 さらに、親の語りかけの量が大きな違いを生むこともわかった。親との対話が多かった子どもは、3歳の時点でIQがより高く、9歳と10歳のときにも学校の成績が比較的良かった。

テレビやスピーカーの「語りかけ」では効果なし

 子どもに多くの言葉を聞かせるだけで済むなら、話は簡単だと思うかもしれない。だがテレビやCD、インターネットやスマートフォンでいくら言葉を聞かせても、あまり効果は期待できないようだ。ワシントン大学の神経科学者パトリシア・クールらは、生後9カ月の赤ちゃんを対象とした調査で、このことを実証した。

 クールたちは、英語を話す家庭の生後9カ月の赤ちゃんに中国語を聞かせる実験を行った。中国語を母語とする保育士たちが遊び相手をし、本を読み聞かせたグループの赤ちゃんは、「保育士によく懐きました」とクールは話す。別のグループには、同じ保育士たちが中国語を話す映像をビデオで見せた。第3のグループには映像は見せず、録音した音声だけを聞かせた。すべてのグループに12回のセッションを受けさせた後、中国語の似通った音声を聞き分けられるか、脳磁計を使ってテストした。

 事前の予想では、ビデオを見たグループも、保育士と顔を合わせたグループと同程度の成績になるだろうと考えられていたが、実際には両者の成績には大きな差があった。生身の触れ合いがあったグループは、中国語を母語とする人たちと同様に音声を聞き分けられた。ところが映像や音声だけで見聞きし、実際の触れ合いがなかった二つのグループは、中国語の音声をまったく判別できなかったのだ。

この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年1月号でどうぞ。

編集者から

「今日、学校どうだった?」――子どもにこんな言葉をかけている親御さんは多いでしょう。 “プロ家庭教師”の西村則康氏によると、こうした問いかけは子どもの成績を伸ばすどころか、逆に下げてしまいかねないとか。「楽しかった」「別に」といった具合に一言で会話が終わってしまう質問ではなく、「お昼休みはどんなふうにして遊んだの」など、長い文章で答えさせるような質問をしたほうが、国語の成績が上がりやすいそうです。
 今回の特集では、このように、周囲の大人の関わり方が子どもの脳の発達を大きく左右することを科学的に検証した研究例をいくつも紹介しています。ポイントとなるのは「愛情」。特に幼いお子さんがいる方はぜひ読んでください。今日から実践できるヒントがきっと見つかるはずです。(編集M.N)

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