世界有数の豊かな海を誇るアフリカ南部。水産資源が枯渇に向かうなか、環境保護派と地元漁師の思いが対立している。両者が共存する道はあるのか。

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アフリカ南部の海 保護と漁のはざまで

世界有数の豊かな海を誇るアフリカ南部。水産資源が枯渇に向かうなか、環境保護派と地元漁師の思いが対立している。両者が共存する道はあるのか。

文=ケネディ・ウォーン/写真=トマス・P・ペシャック

 魚を食べるのも釣るのも大好きな南アフリカの人々にとって、漁獲量の減少や種の消滅は深刻な問題だ。だが危機に直面しているのは魚だけではない。漁で生計を立てる地元漁師の半数が、生活の基盤を脅かされ、食料不足に陥っているといわれている。

漁業権の割り当てに殺到した南アフリカの人々

 1994年、南アフリカは民主化を果たし、ネルソン・マンデラを大統領に選出。政権を握った与党のアフリカ民族会議(ANC)は、社会の不平等を是正し、貧困層の生活を向上させる鍵として、漁業に着目した。数千人にのぼる“歴史的に不利な立場に置かれてきた人々”、つまり黒人や有色人種(主にヨーロッパ人とアフリカ人の混血)の人々が漁業権を取得した。2004年までには、商業的な漁獲割り当ての60%以上を彼らが獲得。10年前の1%未満から大幅に比率を高めた。

 だがラインフィッシュ(釣り糸を使って捕る魚)の枯渇が深刻化するなか、政府は過ちを犯した。「用意した料理が足りなくなるほど大勢の客を立食パーティーに招いた」うえ、ある漁業者グループを丸ごと「招待者リスト」から外してしまったのだ。新しい漁業政策が適用されたのは、商業、レジャー、自家消費が目的の漁業者で、それ以外の小規模な漁業者は含まれていなかった。

 割り当て制度からの排除は、彼らにアパルトヘイト時代の苦い記憶をよみがえらせた。疎外感の原因はもう一つある。本来なら彼らのためになるはずの海洋保護区(MPA)の存在だ。

南アフリカ周辺の海では、カツオドリが勢いよく海中に飛び込み、空腹のサメが集団を作って、イワシの大群を襲う。

 生き物をはぐくむ海洋保護区は、海洋生物の保護と漁業管理の両面から不可欠なものと考えられている。海洋国家の大半が、2020年までに地球の海の10%を保護することを目標に掲げた国連条約に署名している。
 だが多くの小規模な漁業者にとって、海洋保護区は“不公平”という傷口に塩をすり込むような存在となる。

「政府は海をわかっていないやつらに割り当てを与えてしまったんだ。おかげでこっちは密漁するしかない。俺たちが違法行為をする羽目になったのは、割り当て制度のせいさ」
 過去に4回逮捕されている漁師は言った。
「許可証なんかなくても、死ぬまで漁はやめないよ」

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2014年12月号でどうぞ。

編集者から

 冒頭に登場するのは、袋いっぱいのアワビを背負って浜辺を立ち去る男たち。彼らが通う“密漁ハイウェー”と呼ばれる道から、毎年数百トンにのぼるアワビが運び出され、香港をはじめとするアジア各地に向かいます。また、キャリア17年目のベテラン漁師は、日々の暮らしをまかなうため、4回逮捕されてもなおイセエビの密漁を続けています。南アフリカ産のアワビとイセエビ。いずれも流通している高級食材ですが(特にイセエビ)、南アフリカの「地元漁師の半数が食料不足に陥っている」と知った後では、とても食べたいとは思えなくなりました。(編集M.N)

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