第18回 一網打尽! クマムシ大量捕獲マシーン

※ぜひ拡大してご覧ください。(画像クリックで拡大)

 以前ここで書いたように、水を入れたシャーレにコケを浸しておくと、クマムシがコケから出てくるので捕獲できる。だが、クマムシを研究する上では、ときとして多数のクマムシを野外から捕獲して調べる場合もある。こんなときに使用するのが、クマムシ大量捕獲マシーンのベールマン装置である。

 マシーンといっても、ハイテクな代物ではない。ベールマン装置はいたってローテクでシンプルな仕掛けでできている。基本的には、この装置はろうととゴムホースからできている。

 ベールマン装置の使い方は、こうだ。ろうとに金網を掛け、その上に目の細かいメッシュを乗せる。その上にコケや土などを置いて、これらが浸るまで水を注ぐ。ろうとの下に接続されたゴムホースは、コックで締まっているので水が漏れることはない。

 試料から這い出てきたクマムシは、足を滑らせて水中を落下する。落下したクマムシは、ゴムホースのコックの位置でとどまる。一晩待つと、多数のクマムシが集まる。コックを開けば、集まったクマムシをシャーレに回収できる。顕微鏡で覗くと、クマムシ天国とでも形容したくなるようなクマムシだらけの世界を見られることもある。

 ちなみに、生態学的な研究では、このようにして捕獲したクマムシ1匹1匹をすべて標本にして種同定をすることもある。場合によっては数千匹のクマムシが出てきてしまうので、何日間も徹夜で標本にしなければならず、クマムシ天国どころかクマムシ地獄に陥る。クマムシ大量捕獲マシーンはクマムシ研究者虐待マシーンでもあるのだ。

つづく

堀川大樹

堀川大樹(ほりかわ だいき)

1978年、東京都生まれ。地球環境科学博士。慶応義塾大学SFC研究所上席研究員。2001年からクマムシの研究を始める。これまでにヨコヅナクマムシの飼育系を確立し、同生物の極限環境耐性能力を明らかにしてきた。2008年から2010年まで、NASAエイムズ研究センターおよびNASA宇宙生物学研究所にてヨコヅナクマムシを用いた宇宙生物学研究を実施。2011年から2014年まで博士研究員としてパリ第5大学およびフランス国立衛生医学研究所ユニット1001に所属。『クマムシ博士の「最強生物」学講座――私が愛した生きものたち』(新潮社)、『クマムシ研究日誌 地上最強生物に恋して』(東海大学出版部)の著書がある。Webナショジオ「研究室に行ってみた。」の回はこちら。人気ブログ「むしブロ」および人気メルマガ「むしマガ」を運営。ツイッターアカウントは@horikawad