不思議でふしぎな寄生生物“勝手にベスト5”

 野生生物は厳しい自然界をそれぞれの才覚でなんとか生き抜いているはずなのだが、他の生物に頼って生きているものがいる。そう、寄生生物だ。宿主となる生物の体を住処にし、こっそり栄養を掠めとり、時には重篤な症状をもたらす厄介な寄生生物。これらのなかにはよくよく生態を見ると実に不思議な暮らしぶりをしているものがいる。そこで、『寄生虫の奇妙な世界』(誠文堂新光社)の著者である斉藤勝司さんに、驚きに満ちた生態を持つ寄生生物ベスト5を推してもらった。

カニに寄生するフクロムシ

カニに寄生してハカマの脇から生殖器を出すフクロムシ。(写真クリックで拡大)(写真:斉藤勝司)
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 フクロムシは分類学上、フジツボやカメノテに近い生物だが、磯の岩に付着することなく、カニに寄生することが知られている。卵からかえったフクロムシの幼生はすぐに寄生せずに、海中を漂うプランクトンの生活をするが、ケントロゴンと呼ばれる幼生になったメスはカニの体内に侵入。カニの体中に根のような器官を張り巡らせて栄養を吸収する。

 カニから栄養をもらって十分に成長したメスは、カニの表皮を突き破って生殖器を体外に露出させる。この頃になるとメスに比べて極端に小さなフクロムシのオスが生殖器に入り込み、生殖器の中の卵子に精子を与えて受精が成立。卵が産み落とされる。一方、フクロムシに寄生されたカニがオスだった場合、脱皮のたびに外観がメスに変化していき、生殖能力を失ってしまう。こうした状態は「寄生去勢」と呼ばれているのだが、栄養を掠めとられるばかりか、繁殖の機会さえ奪われるのだから、カニにとってフクロムシは厄介な存在でしかない。

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