「残酷だ」「健康によくない」「地球環境を破壊する」といった、牛肉をめぐる主張は果たして正しいのか? 生産現場を訪ね、答えを探した。

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シリーズ 90億人の食 肉を食べるジレンマ

「残酷だ」「健康によくない」「地球環境を破壊する」といった、牛肉をめぐる主張は果たして正しいのか? 生産現場を訪ね、答えを探した。

文=ロバート・クンジグ/写真=ブライアン・フィンク

 人類は、この先いつまで肉を食べられるのだろうか?

 肉を食べるためには動物を殺さなければならない。食肉、とりわけ牛肉は大型車とたばこを合わせたくらい有害で、動物のため、人間の健康のため、さらには地球のためにも、肉の消費を減らすべきだ――そんな主張も聞かれる。
 そうは言っても、肉はおいしいし、栄養価も高い。食肉の需要が世界で急拡大している現在、生産量を増やすことが急務だ――そう考える人もいる。

 牛肉の大量生産に対する風当たりは強い。温室効果ガスを大量に排出し、農地をやたらに使い、貴重な水を汚染し、浪費しているというのだ。しかも、おびただしい数の牛を狭い囲いに閉じ込め、不自然な生活をさせた揚げ句、早死にさせる残酷な産業だという。本当にそうなのか。大半の消費者は牛肉の生産現場についてほとんど何も知らない。2014年1月、私は食肉の問題を考える長い取材の一環として、米国テキサス州のラングラー肥育場で1週間を過ごした。

牛1頭からとれる肉は1800食分

 火曜の朝6時45分、肥育場から旅立つ牛を見つめる私の横には、肉牛肥育の大手カクタス・フィーダーズ社の最高執行責任者ポール・ディフォーがいた。同社はラングラーをはじめ、9カ所の肥育場を傘下に置き、年間100万頭の肉牛を出荷している。
 この朝も数十頭が大型の輸送トラックに乗り込もうとしていた。2段の荷台に、それぞれ17頭ずつ収容できる。牛は行き先を知らないはずだが、荷台に入る手前で、先頭の牛が進むのを嫌がった。

 カウボーイの巧みな誘導で、牛たちの渋滞はほどなく解消した。重さ20トン近い「生きた貨物」が、上下の荷台に収まる。運転手が荷台の扉を閉め、運転台に乗り込むと、トラックは出発した。

 私はディフォーとともに小型トラックで後を追った。牛の最後のすみかだった囲いには、すでに重機が入り、地面にこびりついた5カ月分の糞をはぎ取っていた。輸送トラックは一路、州内の食肉処理場を目指していた。

「さっきトラックに載せた牛1頭で、1800食分の食事がまかなえます」とディフォーが言った。「すごいと思いませんか。あのトラックには、6万食分の肉が載っているんですよ」

 ディフォーはテキサス州ヒューストン北方の小さな農場で育った。食料を自給し、余った分を売る生活だ。「牛も鶏もヤギも飼っていました」と彼は話す。数ヘクタールのエンドウマメ畑もあり、子どもの頃はよく収穫を手伝わされた。当時の生活に戻りたいとは思わないという。

 そんなやり方では世界の食料需要を満たせず、人々の生活水準を上げることもできないと、ディフォーは言う。食料供給を安定させ、生活を豊かにするには、科学技術を利用して生産性を上げ、無駄を減らす必要があるというのだ。

 ラングラー肥育場には、こんな標語が掲げられていた。
「飼料のエネルギーを、できるだけ低いコストで可能な限り多くの牛肉に転換すること」

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2014年11月号でどうぞ。

編集者から

「牛肉を食べることは是か非か?」という問いの答えを探す特集ではありますが、写真を見ていると、無性に牛肉が食べたくなります。特に、「完全自然派」バーガーにかぶりついている4歳の女の子の写真。こんなにおいしそうに食べる場面を見せられたら、たまりません。編集中、この写真を見るたびに、ハンバーガーが食べたくなりました。でも、量はほどほどにしておかないといけませんね。特集の筆者は取材中に生産者自慢のステーキを食べ過ぎて、健康診断で引っかかったそうですが、私もそうならないように気をつけます。
 来月はシリーズ「90億人の食」の最終回。なんだかんだ言っても、食べることは楽しいこと。古今東西の「おいしい場面」をたっぷり紹介します。(編集T.F)

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