第34回  琴欧洲親方を支えた故郷の味

 商品名どころか必須菌種に国名が入っていた。ブルガリア人とヨーグルトの結びつきは相当に強い。もちろん、ヨーグルトを使った料理もいくつもあるそうだ。私もヨーグルトは毎朝食べるがせいぜいジャムをいれる程度。ヨーグルトの料理とはどのようなものなのか、親方馴染みのブルガリア料理店「ソフィア」でいただいてみることにした。

「僕もヨーグルトは毎朝食べています」と言うのは、ソフィアで働くブルガリア人のヨルダン・クラシミロフ・マルコフさん。来日して8年になるというヨルダンさんに、さっそくヨーグルト料理を尋ねた。

「一番有名なのはタラトルですね。夏は欠かせません」

 タラトルとはヨーグルトに水や牛乳などを混ぜた冷製スープで、確かに琴欧洲親方もよく飲むと話していた。「一般的にはニンニクとキュウリ、クルミが入っています。ブルガリアの夏は40度を超す暑さですが、さっぱりしているので食が進むし、夏バテにもいいんですよ」とヨルダンさん。ブルガリア人はみんな夏になると毎日のように飲むという。

 出されたタラトルはヨーグルトよりサラサラしていた。塩気のあるさっぱりとした味でニンニクがほのかに香り、キュウリの食感とクルミの甘みがほどよい。消化もよさそうで、確かに暑い夏にはぴったりだ。親方は店に来ると2杯飲むこともあるそうで、ヨルダンさんも「お昼に飲むことが多いですが、ブルガリアでは大量につくってビールのジョッキに入れて飲んでいましたよ」と言って笑う。

 いっぽう、冬によく食べるのはスネジャンカという料理だそうだ。これは店のマネージャーである伊藤和志さんが説明してくれた。「いわゆる水切りしたヨーグルト。食品用さらしやキッチンペーパーで包んで寝かせて水分をとばすことで、クリームチーズのような濃厚でまろやかな味になるんです」

これがスネジャンカ。1日ではやわらかいので店では2日かけて水分を切っている。市販のヨーグルトでも簡単にできるそうだ