第34回  琴欧洲親方を支えた故郷の味

3月の引退会見では「お相撲さんになって良かった」と語った琴欧洲親方。「今後は新米親方として一から仕事を覚え、相撲の普及と発展に尽力します」

「魚や肉料理のソースに使ったり、フルーツやはちみつ、クルミを入れてデザートとして楽しんだりもしますが、普段は450グラムのプレーンヨーグルトのパックをシェイクしてそのまま飲んでいます」

 さすが親方、何とも豪快な食べ方、いや飲み方か。日本に来る前の高校生の頃は、なんと1日2キロものヨーグルトを食べていたこともあるという。「食事を最も多くとっていた頃なのでヨーグルトの量も必然的に増えていましたね。当時はレスリングをしていたので、ダイエットが必要なときはヨーグルトばかり食べて総摂取カロリーを抑えたりすることもありました」と笑う。

 確かにヨーグルトはたんぱく質やカルシウムの吸収率が高く、悪玉菌を減らしてくれる乳酸菌も含む栄養価の高い食べものだ。しかし、親方そしてブルガリア人にとってヨーグルトが特別な理由はそれだけではないようである。

 ヨーグルトがつくられ始めたのは紀元前5000年頃、東地中海からバルカン半島、中央アジアの辺りだとされているが、その効用が本格的に研究されるようになったのは19世紀のこと。1900年代初頭には、ロシアのノーベル賞微生物学者イリヤ・メチニコフがブルガリアのある地方に長寿の人間が多いことに着目し、その理由がヨーグルトを大量に食べているからだとしてヨーグルトを食べることを勧めたという。

 そして、そのヨーグルトの健康効果を裏付けたのがブルガリア人の医学者スタメン・グリゴロフだ。1905年に伝統的なブルガリアのヨーグルトに3種類の乳酸菌が含まれていることを発見したのである。その後、WHOとFAOによって設置された国際政府機関のコーデックス委員会がそのうちの2種類、ブルガリア菌とサーモフィラス菌の発酵作用でつくられたものをヨーグルトと定義づけた(現在の定義では菌の種類が増えている)。

ヨーグルトと牛乳に刻んだニンニク、キュウリ、クルミを混ぜてつくったタラトル。そこにディルや酢を入れるなど家庭によってアレンジは異なる。バジルのオリーブオイルが入っているのは店のオリジナルだ