第3回 完全養殖ウナギの量産化はどこまで可能か?

 日本で流通するほとんどのニホンウナギは養殖されたものであるが、現在の技術では市場に出せるほどに大量のウナギを卵から育てることはできていない。ウナギの稚魚であるシラスウナギを捕まえ、養殖池で育てて初めて出荷可能な成魚が得られるため、日本の養鰻業は天然ウナギ減少の影響を大きく受けることになる。

水産総合研究センター増養殖研究所の田中秀樹さん

 そこで、天然のシラスウナギに頼らない養殖技術の確立が目指されており、水産総合研究センター増養殖研究所の研究グループを中心に親ウナギから採取した卵を親ウナギにまで育て、さらに次世代を生み出す完全養殖技術の開発が進められている。

 研究室レベルでは2010年に完全養殖が実現しているものの、商業レベルでシラスウナギを提供できるまでには至っていないため、公開シンポジウム「うな丼の未来2」では同研究所の田中秀樹さんが登壇。人工的なシラスウナギの量産技術の開発状況について紹介した。

遺伝子工学を応用してウナギの生殖刺激ホルモンを合成

 ウナギの完全養殖の実用化が難しいのには、ウナギの特異な生態が関わっている。ご存知の通り、ウナギの成魚は川や池に暮らしているが、その産卵場所は日本の遥か南。日本から2000キロ以上離れたマリアナ諸島の西方沖 であることが明らかになっている。当然、親ウナギは川を下って産卵場所にまで泳いで行かなければならない。ただ水槽で飼っているだけでは卵を産ませることさえできなかった。

 性成熟を促すホルモンの注射により、人工的にふ化させることは1970年代に成功していたが、当時は生まれて間もない仔魚が何を食べるかも分からず、長らく卵は得られても育てることができなかったのだ。

 この問題を解決したのが田中さんたちだった。田中さんたちはふ化仔魚の飼料にアブラツノザメの卵が有効であることを発見して以降、人工的にシラスウナギを生産する種苗生産技術の研究は大きく進展し、2002年にシラスウナギにまで育てることに成功した。これを親ウナギにまで育て、その親ウナギから得られた卵を仔魚にまで育てる完全養殖に2010年に成功したことは前述した通りだが、完全養殖が実現したからといってシラスウナギを量産できるようになったわけではない。そのためシラスウナギの量産技術の研究開発が進めており、改良の対象となっているのが生殖腺刺激ホルモンだ。

次ページ:シラスウナギの大量生産を可能にする飼料や水槽の開発を