第6回 致死率30%の新興ウイルスが日本に定着している!

 安田さんはウイルスの増殖機構を調べることで、抗ウイルス剤に応用できないかと考えている。その一方で、科学警察研究所での研究開発として、「モバイル型生物剤検知システム」を作り、現場に投入するのに成功した。

 では、これからの研究、これからの課題としてどのようなものがあるだろうか。

 これも盛りだくさんなので3つのテーマに絞る。

 ひとつめは、日本国内の新興ウイルス。

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「国内で最近見つかったSFTSウイルスというダニが媒介するウイルスに注目しています。2012年の末に山口で患者さんが亡くなったことで知られました。『重症熱性血小板減少症候群』という舌かみそうな病名がついてるんですけど、これは、もう症状からいくと、ほとんどクリミア・コンゴ出血熱と一緒なんですよ」

 このウイルス病についての報道は知っていた。シカなど野生動物についているマダニが媒介するそうで(イエダニは媒介しないのでその点、ありがたい)、実は出血熱の症状を示すのだという。中国で原因不明の病気として初めて報告されて、2011年に原因ウイルスが見つかっている。中国での致死率は10数%。日本では、2013年末までの致死率は30%! 今の日本で、発症したら30%が亡くなる感染症はそうそうない。

「最終的には多臓器不全などで亡くなるんですけれども、血小板が減少して、血が止まらなくなります。国立感染症研究所が中心になって、野生動物についてるマダニを見たり、動物の抗体調査をしているんです。北海道の野生動物についてるダニなんかからもウイルスが検出されていて、国内に定着しちゃっています。実は、長崎大学病院でもすでに5名の患者さんが出ています。もう身近な問題として取り組まざるをえない。マウスを使いまして、病態ですとかウイルスの増殖がちゃんと見られる動物モデルを今つくっています。それと、抗ウイルス剤ですね。うちの若い助教が、SFTSに対する抗ウイルス剤の開発をしています」

 SFTSも実はエンベロープ・ウイルスで、安田さんがエボラやマールブルグについて考えてきた抗ウイルス剤のアプローチが有効かもしれないそうだ。

併設の「熱帯医学ミュージアム」(左)にはSFTSの解説が(右)。(写真クリックで拡大)
血を吸って膨らんだマダニ(左)。血を吸う前は数ミリ程度でも、血を吸うと1円玉以上の大きさになる。マラリアを媒介するカの巨大模型も(右)。(写真クリックで拡大)
病原を媒介する動物や、危険な動物。(写真クリックで拡大)