第5回 ゾウの睡眠、ネズミの睡眠

 これまで何回かにわたって、睡眠時間の個人差について遺伝と環境の相互作用の視点から眺めてみた。これとは別に、睡眠時間の個人差や加齢変化について進化論的な視点からさまざま論議されているので、代表的な仮説やその実証データをご紹介したい。

 個人差が大きいという点では身長も同じである。身長といえば健康調査票などではついつい2cmほどサバを読んで書き込んでしまう私だが、先日の健康診断で昨年より5mm縮まっていることを知り愕然とした。このコラムの編集者は「誤差でしょ」と気楽に笑い飛ばしてくれるが、180cm以上ある人に言われると何故だか素直に頷けないのである。

 ともあれ私の場合は測定ミスだと思うが、一般的に年齢とともに身長が縮むのはよく知られた事実。「夕方に測ったので」などと言い訳してみても空しいだけで、ましてや高くしたい低くしたいと駄々をこねる人はいない。だがこと睡眠時間となると「若い頃のように長くできるかも」と期待を抱いてしまう方が多い。しかし残念ながら、身長同様、睡眠時間にも情け容赦なく加齢の鉄槌が振り下ろされる。

 成人後の睡眠時間の変化は概ね次のような具合だ。

1) 睡眠時間は10年ごとに10分ずつ短縮する。
2) 夜間の中途覚醒時間は10年ごとに10分ずつ増加する。
3) 寝つくまでにかかる時間には大きな変化なし。20代と80代を比較しても違いは10分以下。
4) 睡眠時間に占める深い睡眠の割合は10年ごとに2%ほど減少する。

 一目瞭然、明々白々、問答無用で睡眠時間は浅く短くなっていく(図1)。「そんな夢も希望もない話は聞きたくない!」というお叱りの声が聞こえてきそうだが、これが現実。ちなみに夢見る睡眠(レム睡眠)は年をとってもあまり減らない。え、黙れ?

図1:加齢に伴う睡眠時間の変化。Ohayonらのデータから筆者が作成。(イラスト:三島由美子)(画像クリックで拡大)

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