第2回 ヒト科の心はどのように発達してきたのか

 京都大学野生動物研究センター・熊本サンクチュアリは、かつて医学感染実験などに使われたチンパンジーが、余生を安心して過ごせるようにするための施設だ。

 同時に大学の付属施設なので、研究の場でもある。もちろん、それは感染実験のような「侵襲的」(invasive)なものではない。ウェブサイトには、「環境エンリッチメント」「ストレスと飼育環境が行動におよぼす影響」といった動物福祉に直接かかわる研究テーマが掲げられている。比較的高齢なチンパンジーが多いため「老齢医学からのアプローチ」という項目もある。

 そんな中で、常駐の教授である平田さんのテーマは、「チンパンジーの社会的知性」だ。施設を案内してもらいつつ、その一端に触れることができた。

 ちょうど昼ご飯の時間だった。

 人間の昼食は後回しにして、チンパンジーの食事に「同席」することになった。平田さんは食事の機会に、実験用のブースにチンパンジーを呼んで、様々なトレーニングや下準備をするという。

 平田さんと、飼育担当のマイケル・セレシュさんは、チンパンジーたちが食べる果物や芋を切り分けた。銀色のトレーの上に盛られたのは、リンゴ、パイナップル、バナナ、サツマイモ、そして、大粒のぶどう(品種はレッドグローブ)。

 平田さんが名前を呼ぶと、ふだんチンパンジーがいる運動場から網状のトンネルを通じて、人間の家屋でいえば4畳半相当くらいのブースに、ふたりずつチンパンジーが出てくる。最初は、男性で、ロイとジャンバのコンビだった。

チンパンジーのお昼ご飯(左)。飼育担当で特別研究員のマイケル・セレシュさん(右)。(写真クリックで拡大)

本誌2014年8月号でもチンパンジーの特集「ゴンベ 森の家族たち」を掲載しています。Webでの紹介記事はこちら。チンパンジーの「家族アルバム(フォトギャラリー)」はこちらです。ぜひあわせてご覧ください。