第1回 59にんのチンパンジーが余生を送る場所

 熊本空港でレンタカーを借りて南西に走り、熊本市をかすめるように国道57号線、いわゆる天草街道へ入る。島原湾の向こう側に雲仙普賢岳をのぞむ風光明媚な道をひたすら進むと、急なカーブの後に「京都大学野生動物研究センター・熊本サンクチュアリ」の看板があった。その唐突さは、熊本に京都大学! というのと同じくらい、「サンクチュアリ」という言葉の一見、意味不明な部分にも関係がありそうだ。

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 看板から先、急斜面の山道に入る。バンカンなどの柑橘類の果樹園や山林の間から、時々「サンクチュアリ」の建物群が見える。建物の間にタワーがあるのも確認した。そこに黒っぽい生き物がいないかと、目を凝らす。

 黒っぽい生き物というのは、チンパンジーのことだ。

 チンパンジーというと動物園にいるもの。日本ではそう思われがちだ。でも、ここは動物園ではなく、一般公開もされていない。サンクチュアリというのは「保護施設」という意味合いだ。

 本当に急な坂を登り切ったところに事務棟があった。建物から、平田聡・京都大学野生動物研究センター教授が、作業着姿で出てきて、迎えてくれた。サンクチュアリを拠点に研究活動をしている一線の研究者だ。「チンパンジーの社会的知性」が専門分野だと聞いている。

 しかし、ぼくは、まず素朴な質問をした。

 この「サンクチュアリ」って、要するになんなのですか、と。

 本当にいきなり、山の中にポンとあって、地元の人ですら、あれは何だろうとよく分からないのではないか。それが第一印象だったのである。

 平田さんは、柔らかな物腰で答えてくださった。

京都大学野生動物研究センター教授の平田聡さん(左)。後ろに見えるのが「タワー」。(写真クリックで拡大)

本誌2014年8月号でもチンパンジーの特集「ゴンベ 森の家族たち」を掲載しています。Webでの紹介記事はこちら。チンパンジーの「家族アルバム(フォトギャラリー)」はこちらです。ぜひあわせてご覧ください。