第8回 シロクマムシ

(画像クリックで拡大)

 乾燥したコケを水に浸すと吸水し這い出てくる、乾燥耐性動物たち。先週は脇役であるヒルガタワムシとセンチュウについて触れた。これら前菜のあとのメインディッシュとして、いよいよ本連載の主役であるクマムシについて紹介したい。

 クマムシ、つまり緩歩動物門には、様々な色や形態をもつものが存在する。市街地の路上に生える乾燥したコケからもっともよくみられるクマムシは、いわゆる「シロクマムシ」とよばれるものである。あなたがはじめて目にするクマムシも、おそらくこのシロクマムシであろう。

 シロクマムシという名は生物分類学的に正しい呼称ではなく、外観が半透明で白っぽい種類のクマムシの総称のことである。ちなみに、クマムシ研究者の鈴木忠博士によってこの呼び名がはじめて用いられた。

 シロクマムシは、実際にはチョウメイムシ属やヤマクマムシ属などの分類群に属することが多い。だが、実体顕微鏡では、シロクマムシがクマムシのどの種類なのかを判別することは非常に難しい。このような理由で、クマに対するシロクマのごとく、白いクマムシをすべて一緒くたにしてシロクマムシと私たちはよぶ。この呼び名には、曖昧さと愛おしさがブレンドされているのである。

 コケの中からもっとも頻繁にみられる、シロクマムシ。次回以降は、その他のクマムシグループについて紹介していきたい。

つづく

堀川大樹

堀川大樹(ほりかわ だいき)

1978年、東京都生まれ。地球環境科学博士。慶応義塾大学SFC研究所上席研究員。2001年からクマムシの研究を始める。これまでにヨコヅナクマムシの飼育系を確立し、同生物の極限環境耐性能力を明らかにしてきた。2008年から2010年まで、NASAエイムズ研究センターおよびNASA宇宙生物学研究所にてヨコヅナクマムシを用いた宇宙生物学研究を実施。2011年から2014年まで博士研究員としてパリ第5大学およびフランス国立衛生医学研究所ユニット1001に所属。『クマムシ博士の「最強生物」学講座――私が愛した生きものたち』(新潮社)、『クマムシ研究日誌 地上最強生物に恋して』(東海大学出版部)の著書がある。Webナショジオ「研究室に行ってみた。」の回はこちら。人気ブログ「むしブロ」および人気メルマガ「むしマガ」を運営。ツイッターアカウントは@horikawad