アフリカの肥沃な大地で進む、大規模な農業開発。食料増産や雇用拡大への期待が高まる一方で、地元の農家が土地を追われる問題も起きている。

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シリーズ 90億人の食 アフリカの農業開発

アフリカの肥沃な大地で進む、大規模な農業開発。食料増産や雇用拡大への期待が高まる一方で、地元の農家が土地を追われる問題も起きている。

文=ジョエル・K・ボーン Jr./写真=ロビン・ハモンド

 アフリカの農業生産は、1960年代からほとんど増えていない。

 サハラ砂漠より南の地域で、灌漑されて実際に農業が行われている土地は、耕作可能な土地のわずか5%弱に過ぎない。食料は不足しているにもかかわらず、都市への人口集中は急速に進み、食料の消費者が急増する一方で、農業に従事する人の数は減る見込みだ。

 だがアフリカは、実は肥沃な大陸だ。近代的な農法が導入され、融資など農家への支援が進めば、食料不足を解消できるばかりか、余剰分を輸出できる可能性すら秘めている。

農業開発ブームの中心地モザンビーク

 そんなアフリカの農業開発ブームの中心地となっているのが、土地が肥沃で、政府が大型の土地契約に積極的なモザンビークだ。

 2013年の統計によると、この国は世界第3位の貧困国で、5歳未満の子どものほぼ半数が栄養失調という。それでも近年、炭田や天然ガス田が発見され、鉱業や森林資源の開発も始まり、2013年には推定7%の成長を達成した。

 日本やポルトガル、中国といった資源開発の権益を狙う国々が、モザンビーク政府と親密な関係を築き、融資を進めている。だが、潤沢な資金が流入しても、2400万人の国民にはほとんど何の恩恵もない。今も人口の半数以上が、1日1.25ドルの貧困ライン以下で暮らしている。2010年には食料価格をめぐって首都マプトで暴動が頻発し、農業大臣が更迭された。

 モザンビークには、日本の国土面積にほぼ匹敵する3600万ヘクタールの耕作可能な土地があるが、政府はその85%を「未利用」とみなしている。2004年以降、およそ250万ヘクタールの土地が林業やバイオ燃料開発、サトウキビ生産などの用地として、外国と国内の企業に貸し出された。

 モザンビーク南部のリンポポ川河口域一帯で、中国企業の万宝糧油が設立した農業開発会社が、2万ヘクタールの大農園を造成し始めた。
「そんな話はまったく聞いていませんでした」と話すのは、この畑で細々と農業を営んできた45歳のフローラ・チリメだ。5人の子どもを育てる母親である。
「ある日突然トラクターが来て、何もかもつぶしてしまったんです。畑を奪われても、誰にも何の補償もありません」

 チリメの身に起きた出来事は、アフリカの農家にとって人ごとではない。彼らの背後では、世界の農業地図が刻々と塗り替えられつつある。

※ナショナル ジオグラフィック2014年7月号から一部抜粋したものです。

編集者から

 今回の特集には、アフリカで農業を営んでいる人たちのポートレートを掲載しています。外国の大企業に畑を奪われた女性、洪水と闘いながら大家族を養う男性、NPOの支援を受けて収量を増やした女性。写真を見ながら、彼らが日々どんな思いで作物を育てているのか、遠く離れた大陸での暮らしを少しでも頭に思い描いてもらえると嬉しいです。モザンビークで日本とブラジルが共同で進める農業開発事業「プロサバンナ」には、現地の農民団体などから即時停止を求める声が上がっているようですが、すべての住民にとって最善の形で問題が解決されることを願っています。
 来月号のシリーズ「90億人の食」では、米国で新たな形の「飢餓」が広がっている問題の深層に迫ります。(編集T.F)

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